GREEN TEA TIME
イギリス万国樹木博覧会


メタセコイヤ(アケボノスギ)
(曙杉・水杉

Dawn Redwood(Metasequoia glyptostroboides)

99年末〜2000年初めに日本に戻った時、実は楽しみにしていたのが、
電車の車窓から見える木々でした。今まで気にとめなかったけれど(お恥ずかしい(^v^)"")
どんな木が好んで植えられているのかなぁ?と、
神奈川県・東京都・千葉県あたりを電車で移動していると、
道路脇の電線のために刈り込まれてしまった街路樹をよそに、
4階建ての団地の裏庭に、線路脇の小さな公園に、
かなりの大きさで空にそびえる、スラーっと細い円錐形のシェイプで立っている
葉っぱが赤銅色の木をちらほら見かけるじゃないですか。
「ムムム!あれこそは、メタセコイヤに違いない!」と、
電車の中で力強くうなずいた私だったのでした。

なぜメタセコイヤと踏んだかというと、

<理由その1>細い円錐形の樹形と葉っぱのテクスチャーから、100パーセント針葉樹だ!
一般的に針葉樹はとんがり帽みたいな樹形になりますよねぇ、
そして、細い針みたいな葉っぱの様子がよく見えました。

<理由その2>冬場に葉っぱが全部赤銅色、つまり紅葉している。
全体的に紅葉しているということは、落葉する針葉樹。
となれば、チョイスはグッと限定されてきますねぇ。
落葉する針葉樹は通常、カラマツ、イヌカラマツ、メタセコイヤ、ヌマスギしかないはず。

<理由その3>でも、カラマツとイヌカラマツではなさそう。
カラマツは葉っぱはテクスチャーがもっとしっかりしているし、
葉っぱが枝から垂れ下がる感じ。
それでもって、イヌカラマツはお値段がかなりお高いんじゃないかなぁ?

   <理由その4>樹形が細長い円錐形にキレイに決まっているし、幹も空に向かって先細りのシェイプ。
通常、ヌマスギが針葉樹でありながらふわふわした丸みをおびた円錐形にキマルのに対して、
メタセコイヤは尖がった円錐形にキマルみたいだ。

<理由その5>小さな公園とか団地の裏とか、乾いた地面に植わっている。
ヌマスギは狙い的に、池のほとりなどの水場の脇に植えるのが定石、というか、
そのほうが興味深いことが起こって面白いので、乾いた地面に植えるならメタセコイヤかな?

<理由その6>メタセコイヤは日本にゆかりの深い木だから、たくさん植わっていて当然。
歴史的に西洋主導の植物学界において、
中国&日本の東洋チームが鳴り物入りで送り込んだ、というか紹介した、
歴史的にも大変由緒のある木なのですねぇ!

で「歴史的」とは、地球の歴史のことなんだなぁ!メタセコイヤは、
イチョウとともに中国原産の「生きた化石」の双璧をなす、ビックリな木なんですねぇ。
文明の歴史も古いけど植物の歴史も古い中国がまたまたやってくれました!

メタセコイヤは1940年代までは、
化石でしか発見されていない絶滅した木と考えられていました。
「メタセコイヤ」という名前は、日本で出土していた約500万年前の木の化石を研究した
化石学者の三木茂博士が1941年に
「the newest sequoia (最も最近のセコイヤ)」という意味で命名したそうです。

そして1945年に、中国の四川省で生きた本物が発見されて、鄭博士、胡博士の鑑定により、
メタセコイヤであることがわかったのでした( 辻井達一「日本の樹木」)

この「生きた化石」の発見は世界中をかけめぐり、
間もなく御本家の中国のみならず、日本を含めた全世界でメタセコイヤブームが起きました。
イギリスでも物珍しさから好んで庭園や公園に植えられています。

この写真はキュー・ガーデンで見かけたまだ幼いメタセコイヤですが、
アメリカ人夫婦が木の前で記念写真を撮っていました。
「生きた化石」は人の想いを、遥か太古の地球を被っていた
スギの仲間たちの大森林へといざなうのですねぇ。

ロンドンのリージェンツ・パークには、人工的に作られた小さな水辺のスペース脇に、
メタセコイヤとヌマスギが仲良く並んで植えられています。
(その近くにイチョウも植わっていて、なんか西洋の植物学から見たらキワモノばっかり集めて
植えたってところが、 なんともイギリス的ですねぇ(笑))

同じ落葉針葉樹で、一見区別がつかないメタセコイヤとヌマスギですが、
「メタセコイヤでは、枝の同じところから鳥の羽のような葉っぱが対称的に生える(対生)けど、
ヌマスギはおおむね互い違いに生える(互生)」という、「葉っぱの掟」があります。
そのほか私が感じたところでは、メタセコイヤの葉っぱのほうがしっかりしていて、
ヌマスギの葉っぱのほうがもっと繊細な雰囲気があると、思いました。

上の写真は紅葉したメタセコイヤの葉っぱです。
葉っぱのつきかたがだいたい対生ですねぇ
(もう落ちちゃった葉もあるので、互い違いっぽく見える箇所もありますが...)。

ところで、メタセコイヤとヌマスギを見分ける決定的な違いがもうひとつあるのですが、
それについてはヌマスギのページへどうぞ!

世界中の公園や植物園に植えられているとはいえ、
野生での生息域がもともと極端に小さいメタセコイヤは、 モンキーパズル
日本のコウヤマキと同様、野生状態での絶滅が最も心配されている針葉樹のひとつです。

ヌマスギの学名は Taxodium distichum、英名は Swamp Cypressです。
イヌカラマツの学名はPseudolarix amabilis、英名は Golden Larch です。
メタセコイヤ、ヌマスギ、日本のスギ、タイワンスギ、コウヤマキらは、
カリフォルニアに生えている世界一巨大な木 − セコイヤメスギやセコイヤオスギと同じ
偉大なるスギ科の仲間たちです。

(原産地:中国南西部(四川・湖北両省))


(first on site: 00/01/17, modified: 00/04/18)

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