発行日:’94年 4月10日(日)
発行:守山リス研事務局

リス研通信 No.344

北海道 帯広市エゾリスの会訪問 9/9

堀之内先生に伺う

[写真:堀之内先生と]
[写真:植生の説明図]
緑ヶ丘公園、帯広農業高校、畜産大学の樹木
樹木名 胸高直径(cm) 場所
チョウセンゴヨウ 33 緑ヶ丘公園
シラカンバ 51 緑ヶ丘公園
ドロの木 122 緑ヶ丘公園
ヤチダモ 78 緑ヶ丘公園
ハルニレ 80 緑ヶ丘公園
カシワ 47 緑ヶ丘公園
カラマツ 45-50 緑ヶ丘公園
ドイツトウヒ 40 農業高校前
ドロの木 70 畜産大学
チョウセンゴヨウ 40 畜産大学
エゾマツ 26 畜産大学
ミズナラ 77 畜産大学
ミズナラ 120
(230年)
百年記念館の保存木

Iさんの報告

Kさんと二人で帯広市を訪れ、エゾリスの会のI2さん、K2さん、Mさんの三人に案内していただきいろいろと有益な勉強をさせて頂きました。紙面をお借りしてまず多忙な時間を割いて案内して下さった御三方に厚くお礼申し上げるとともに私が感じた事を報告いたします。緑ヶ丘公園は名古屋の鶴舞公園と名大医学部、名工大を併せた位の広さで現在は市街地の中の島であり、殆どが落葉樹で針葉樹はチョウセンゴヨウ、エゾマツ等2割くらいで、樹高も最高15m位の高さで樹間も(小さい木がなく)あまり密ではない。冬季のせいもあろうが、空間が広く明るく、名古屋では考えられない様な場所にエゾリスが現れ地上(雪上)を走って餌を取っているのには驚きだった。30m位離れたところに放し飼いの犬を連れた散歩の人がいても全然平気でいるのにはびっくりした。案内のI2さんに聞くと「リスもそれなりの警戒はしているで滅多に捕まることはない。今日は人が多いので警戒して近づかないが、いつもは手の届く所まで平気で寄って来る」との事。今の時期は繁殖期に入ったのか3匹が地上、樹上と追いつ追われつ10-20mの近くで餌を齧ったり、遊んでいたりで人にはよく馴れている感じであった。

野生のリスがこれ迄になるには、人間のほうもいじめたりせずに、温かくリスを見守る長い教育の成果だと思います。私は欧米の公園の様に、リスと遊べる日本第一号の公園は帯広の緑ヶ丘公園ではないかと思います。緑ヶ丘公園では、現在生息しているのは、4匹位だそうで、それが限界らしい。毎年春になると4-5匹の子供が生まれるが、カラスやタカ、交通事故により生き残るのは1匹位だそうです。

東谷山との相違点

  1. リスの人間に対する警戒心が全然違う。これは逆に言えば人間がリスをいじめたり追ったりせず、やさしく見守っているためリスが人間を共存者と認知している。
  2. 餌が十分にある。公園内には2ヶ所の給餌台があり、野鳥と共用で、チョウセンゴヨウ、クルミ、トウモロコシ等沢山与えられている。
  3. 一本のチョウセンゴヨウの木にリスの巣が3つも作られていた。それも余り高くない(5-7m位)
  4. 展示のかやぶきの家の軒下や屋根裏にも巣を作る。
  5. 小さい樹木が少なく、林床が割と広々としている。(これは冬季ばかりのせいではない由。せいぜいササ。)

今回の調査で学んだ事

  1. 北海道には、スギ、ヒノキが全然ない事を知った。クロマツ、アカマツも移植が僅かにあるだけ。
  2. 餌が充分にあり、営巣場所があり、安全が確保されればわりと狭い面積でもリスが生存できる事がわかった。
  3. チョウセンゴヨウは植樹できれば、クルミに次ぐ良い食料になる。
  4. リスの食料についても木の実だけとは限定せず、環境によって幅ができる事が分かった。
  5. 緑の回廊は絶対に必要だ。これがないと増やす事はできず、絶滅の恐れがある。
  6. 北海道でも原生林は僅かしか無く、帯広付近でもせいぜい100年位の木が古く、自然林でも70年位が多い。帯広にはカシワの純林があり北海道の天然記念物になっている。

再度、エゾリスの会の皆様にお礼申し上げます。

森の様子

[写真:見通しの良い林]
林床の様子(林床はササが中心)
[写真:キツツキが掘った木]
キツツキにより掘られた木の穴(これでやっと自然の状態に近づいてきた-I2さん)

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