曲の章−82『ミッション授業』


 

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「…なん…だと?」

ルシードは転がってきた金の首輪を握り締める。

ピンク色の髪が絡まっていた。

「ティセ! 何処だ?」

辺りを見まわす。少し先に悠久学園女子制服の欠片のような物が…

『見えない!』

煙の向こうに焼け焦げたティセのブーツが…

『見えねぇ!!』

「信じねぇ! 信じねぇぞ! あの馬鹿が死ぬかっ! ティセ?隠れてないで出て来い!!」

ルシードの叫びに、ティセではない誰かの声が返ってきた。

 

「無理だってルシード、ティセ吹っ飛んじゃったって」

「そうだよルシード、目の前で見ただろ?」

「…おまえら?」

 ティセが駆け寄ってきた草原の北側、大きな岩の上にいたらしい少年2人、

ピートとビセットがゆっくりとルシードに近づいていた。

「へへへ、ルシード久しぶり! 元気だった?」

ルシードに嬉しそうに声をかけるビセット。

「やっぱルシードも生残ってたんだな!」

「おまえらも無事だったか。それよりティセを探してくれ! あいつ急にいなくなりやがって」

「だからティセは吹っ飛んだじゃん?」

「ルシードも見ただろ? 俺が投げた爆弾で吹っ飛んだんだぜ?」

何を見ていたんだよ? と言いたげな目でルシードを見るピートとビセット。

「…なんだと?」

「オレが支給された爆弾だったんだぜ? それなのにビセットが『野球部の俺にまかせろ!』とか言ってさ〜、

 ルシードとティセいっぺんに吹き飛ばす筈だったのにダッせーよな」

「ティセとろいんだもん。手元狂っちゃたよ」

ピートとビセットの信じられない会話。

「…何言ってんだお前ら?」

「えっ? ルシードこそ何いってんだよ? これ殺しあうゲームじゃん?」

「ルシードも一緒に組もーぜ! オレ達3人だったらぜってー楽勝だぜ」

「ゲームだと? お前等解ってるのか? ティセが…お前等今ティセを…」

ルシードの剣幕にビセットとピートは顔を合わせた。

「なあなあ、もしかしてルシードこれマジだと思ってる?」

「こんなのミッション授業に決まってるジャン!」

ビセットとピートが得意げに笑う。

「ミッション授業だと?」

「そーだぜ、オレとかビセット単位やばくってさー、コレ追試なんだぜきっと」

「へへ、だからさ、ルシードは単位平気だろ? 協力してくれよ、

 アレフみたいに落第すんのカッコ悪いしさ」

「…ミッション授業、そうか、お前等そんなこと考えてたのか」

静かに、深く静かにルシードはそう呟いた。

「そうだぜルシード、気付かなかったのか?」

「俺達すぐ気付いてさ、最初隠れてようって作戦たててたんだ」

 

「…そうか」

ルシードは持っていた刀を振り上げた。

「うん、だからルシードも…えっ?」

ビセットの右腕が空に飛んだ。

 

ボトリ

 

そして、ビセットの目の前に刀で切り落とされたその右腕が落ちた。

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