想の章−8『真実の扉2』


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「何よこれ! 煙しか出ないしとても吸えたもんじゃないわ!!」

 近くに生えていた雑草の葉っぱを丸めて紙に包み、火を付けて吸ってみたバーシアは

ケホケホと咳き込みながら自作タバコに文句をつけた。

「メルフィもメルフィだわ! 適当な事を言って!!」

 冗談である事に気付かなかったバーシアがどうかしていると思われるが、彼女の名誉の為に言っておくと

無理な禁酒禁煙の為精神的に疲弊し、判断力が鈍っていた(どうかしていた)と理解して頂きたい。

 その時、ガシャンと何かが崩れ落ちる音と、メルフィの悲鳴が小屋から響いた。

「メルフィ!?」

バーシアはタバコを投げ捨てると悲鳴の聞こえた小屋に走り、扉を開けた。

「ちょっとメルフィどうしたのよ?」

 小屋では端末が床に落ち、それをメルフィが泣きながら彼女が支給されていた武器、

木製バッドで叩きつけていた。

「もう壊れてるよ,メルフィ落ちついて」

 バーシアは返事のないメルフィが振り上げるバッドを持った右腕を後から掴み、

彼女を落ちつかせるように諭した。

「…? バーシア…さん?」

 まるで今始めてバーシアの存在に気づいたように呆然とした表情で彼女を見つめるメルフィ。

落ちついたのもつかの間、バーシアを見つめるメルフィの目が黒く濁った。

「触らないで下さい!」

「ちょ…メルフィ!?」

バーシアの手を振り解き、メルフィは外に走り出して行った。

「ノイローゼで切れちゃったのかしら? あのコ真面目だから自分を追い詰めちゃう所昔からあったし…

 って追い掛けなきゃ!」

バーシアがメルフィを追い掛ける。

「ちょっとそっちは…」

メルフィの向った先にはこの島と海とを隔てる断崖絶壁の崖の上だった。

「メルフィ、アンタそんな所にたってどうするつもりよ?」

「こないでください!」

メルフィはバーシアを汚い物を見るような目つきでそう叫んだ。

「私は違うわ! 私はバーシアさん達とは違う。だってそんなこと有り得ないもの! だから…だから私は…」

 メルフィはスッと後にステップを踏んだ。

 

…断崖絶壁の海へ。

 

「メルフィー!!!」

バーシアはメルフィが元いた場所にかけより、海を見下ろす。

「…嘘でしょメルフィ」

 既にメルフィの姿はなく、ただ波の音と、海に浮かぶ彼女の愛用していた縁無しのメガネだけが

海の上に浮かんでいた。

 

…そしてそれもすぐ沈んだ。

 

 

悠久学園大学教育学部3年 メルフィ・ナーグ 脱落

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