想の章−7『真実の扉』
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カタカタカタ…ピーッ!
「…」
「あ〜…」
狭い一室に軽快なタイピング音とエラー音が響く。
カタカタカタッ…ピーッ!
「…ふぅ」
「…もう駄目〜、死ぬ〜」
室内には若い女性が2人。先程から端末キーを叩いている女性。
もう一人はその後で床にゴロゴロと転がりながらボヤき続けている美しい女性だった。
ガタガタガタッ!!…ピーッ!
「…………」
「ホントにもう駄目、死んじゃうわ。…メルフィ何とかして」
「何とかできません!! バーシアさん、もういい加減静かにしてください!」
キーボードを叩いていたメルフィがとうとうディスプレイから目を離し、
後でゴロゴロしながらボヤいていたバーシアを叱りつけた。
微妙にキーボードを叩く音が激しくなっていたのは怒りのせいだったらしい。
「だってメルフィ、アタシもう3日もタバコ吸ってないのよ? お酒だって1滴も飲んでないし。
死ぬ…絶対死んじゃうわ。それなのに恩師を心配するどころか怒鳴りつけるなんて」
「ニコチン中毒やアルコール中毒で死ぬ人はいても禁酒や禁煙で死ぬ人はいません!
恩師だって言うんでしたらそれらしい態度を示して下さい。作業も手伝ってくれないし…」
「なによ〜、禁酒のせいで幻覚が見えて死んじゃうかもしれないじゃないの」
(それはアルコール中毒)
「ってそういえばアンタさっきから何カツカツ音たててたんだっけ? アレイライラするのよね」
「もう何度も説明しました! 偶然見つけたこの小屋にあった端末が外部と接続されてるようだから
外の人に知らせて助けてもらえるようにしてるんじゃないですか」
「あ〜そうだったわね。んでパスワードがわかんないからしらみつぶしにパスワード入れてるんだったわね。
で、どうなの?」
メルフィは溜息をつきながら首を左右に振った。
「(…まあそうよね。)」
「7文字使う事は解っているわ。だから時間さえあればきっとできます」
「そりゃそうだけどねえ?…永遠に終んないわよそれ。あーもう! そんなことよりタバコよメルフィ!
このまんまじゃ眠れもしないわ!」
「まだ眠る気なんですか? 寝るんだったら外で寝てくださいね」
「はあ? ちょっとアンタそれは酷いんじゃない?」
「酷い? 酷いですって! バーシアさんが寝言で『酒〜タバコ〜…』ってうるさくて私が困ってるんです!
そんなにタバコが吸いたいなら外の葉っぱでも吸って下さい!」
「…ちょっとメルフィ! 今何て言ったの?」
バーシアの急な剣幕にメルフィは驚き、自分が言い過ぎた事に気がついた。
「え?…あ、ごめんなさいバーシアさん。ちょっと言い過ぎたわ。私もイライラしちゃって」
「違う、タバコがどうこう…」
「外の葉っぱでも吸って下さい? ですか?」
「そうそれよ! そうね、試して見る価値はあるわ!」
(注:ありません)
そうつぶやくとバーシアは小屋を飛び出して行った。
「…まさか雑草に火を付けて吸うつもりかしら? いやだわ、いくらバーシアさんだからってそこまで…
きっと気を利かせて外に出てくれたんだわ。私ももう少し頑張らないと」
メルフィは気を取り直してもう1度端末の前に腰を下ろす。
「永遠に終らない…か」
eternal
ピピッ!
「えっ!? まさか今のパスワードで繋がったのかしら?」
パスワードの認識音と共に、画面にウィンドウが次々と広がって行った。
「何かしらこれ?」
画面に表示された情報を見ていたメルフィの顔色は見る見る真っ青になっていった。
「嘘よ、こんな…悪い冗談だわ」
そう言いながら食い入るように画面を見るメルフィ。唾を飲み込みながら、マウスをクリックした。
次々とウィンドウが開く。
「これ…は…?」
「!?…そんな!?……嘘よ…嘘だわ!! 私、私達って…!!!」