想の章−6『ずっとあなたが好きだった…3』
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『あんたたちの顔なんか、見たくない!大っ嫌い!』
(ホントは解ってたわよ。アレフ達は悪くないって。でもなんだかこいつの前だとムキになっちゃって…
だいたいなんでシーラがいるのよ! こんな時間に女の子連れてきてほんっとにスケベなんだから!!)
『それと…許したわけじゃないからね』
(ああ! もう!! どうしてそんな事言っちゃうのよあたしは!
こんな態度ばっかりとってたら嫌われちゃうのに…ああもう! あんたがはっきりしないのが悪いのよ!)
『なんであんたがここにいるのよ?』
(どういうつもりなのよ! 音楽なんて興味ないくせにシーラの演奏会だとほいほいきちゃうし!
あたしは、そりゃピアノには興味ないけど…音楽は好きなのよ音楽は!!
別にあいつとシーラ二人にすると不安だとか、そんなんじゃないんだから!)
『私もいるんですけど?』
(やっちゃった…だいたいあいつがデレデレした顔するのが悪いんじゃない!
アレフもアレフだわ!シーラの事好きならなんで出て行っちゃうのよ?
そ、それにシーラもそんな言い方じゃこのバカが誤解しちゃうじゃない!!
だからわざと話に入ったのよ。そう、それだけ)
「だから…あたしは余裕があるとか自信があるとかじゃなくて…どうしてもアイツの前だと素直になれないのよ。
それとあたしだってよく考えたらシーラの邪魔ばっかりしてたのよね。
だからおあいこってことでどう? 調子いいかな?」
「…」
「返事がないってことはOKって事にするわよ?」
「…」
「そう、じゃあOKね。ねえディアーナ、あんたは起きてる?」
「…」
「そう、あんたもか…いいわ、絶対なんとかさせるから。その変わり遅れた分殴っておくから安心して」
そうつぶやくと、パティは小さく溜息をついた。
「あ…」
眩しくも太陽が昇り始めた。暗くて誰も気付かなかったがほんの数メートル東には木々がなく、
美しい海と太陽が昇る姿がよく見えた。
「朝か…待ちくたびれたせいで今頃眠くなっちゃったわ。寝顔見られるのは癪だけど…まあ始めてじゃないしね」
(馬車に引かれた時、付きっきりで看病された日の事を思い出す)
「…あたし、本当に頑丈じゃない」
思わず苦笑するパティ。
「バカ、早く助けに来なさいよ…シーラはずっと待ってたのよ? あたしだって少しは待ってたんだから。
早く…来なさいよね! そしたら今度は本当にキスしてあげるから」
そして…夜明けと共にランディの放送が始まった。
「……早く…来てよ」
パティは最後にそう呟くと静かに眠むりについた。
そしてそのまま目覚めることはなかった。
悠久学園高等部1−C ディアーナ・レイニー 脱落(報告済)
悠久学園高等部3−B パティ・ソール 脱落