想の章−4『ずっとあなたが好きだった…1』
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「ディアーナ? ちょっとディアーナは無事なの!?」
動こうにも動けず、パティは叫び声を上げた。
「さあ? 解らないわ。どっちにしろ最後は殺さなければいけないんだから
パティちゃんが気にする必要はないわ」
「なに言ってるのよシーラ、あんたどうかしちゃったんじゃないの!?」
「いやだわパティちゃん、先生が殺し合いをしなさいって言ってるのよ?
これは授業なんだから言う通りにしなくちゃいけないわ」
何を解り切った事を聞くのか?といった表情でシーラが淡々と答えた。
「う、嘘よ、シーラが殺し合いなんて…あんたそんな子じゃないじゃない」
「そんな子? パティちゃんが私の何を知っているっていうの?」
「シーラ?」
「そう聞いてパティちゃん! アレフくんったら私とパティちゃんの事親友だなんて言うのよ?
おかしいと思わない? 私の親友はメイドのジュディだけなのにね」
シーラは心底可笑しそうに笑った。
「…あたしはシーラのこと親友だと思ってるわ」
先ほどから雰囲気がコロコロと変わるシーラの不安定感を気にしながらもパティは本心を告げた。
「ふふふ、そう、そうなのよ! 実は私もパティちゃんの事親友だって思ってるの。どうして?」
「えっ? 『どうして』って?」
シーラの真意がわからず聞き返すパティ。
「私には親友はジュディしかいないの。でも学園で好きな人を3人挙げなさいって言われたら私
アリサおばさまの次にパティちゃんが好きなのよ? 不思議でしょう?
いつパティちゃんが好きになったの? 私はパティちゃんが嫌いなのにね」
パティがいぶかしげな表情でシーラをみつめた。
「ふふ、解らないって顔してるわパティちゃん。気付いてなかったの?
私ね、私の持っていない物全部持ってるパティちゃんが嫌いなの。
彼の心を独占しているパティちゃんが大嫌いなのよ」
「…彼って…アイツのこと?」
「そう、パティちゃんがどんなに邪険に扱ってもアナタの側にいる彼。どうして?
どうしてパティちゃんなの? 私じゃ駄目なのかしら?」
「あいつが…あたしの事好きなわけないじゃない」
「嘘、パティちゃんはあの人の気持ちを知ってるんだわ。だからあんな酷い事を彼に出来るんでしょう?
どんな酷い事を言ったってあの人はパティちゃんの事好きだから」
「酷い事ってシーラ」
「嫌われてしまえばいいって思ってた。だからパティちゃんのお店で暴れてた人を追い出しただけの
彼やアレフくんに酷くあたっているパティちゃんを止めなかった。事情を説明しなかった。
そしたら彼どうしたか覚えてる? パティちゃんにプレゼントを渡したのよ? 私あきれたわ」
「…」
「それだけじゃないわ、彼と一緒にいるとすぐパティちゃんのお店に行こうとするの。
だから私いつも『ママにさくら店にいっちゃいけませんって言われてるの』って言うの。
酷いでしょう? ママのせいにしてパティちゃんのお店の悪口言ってるのよ。
こんな子だって知らなかったでしょう」
「…シーラ、あたし」
「ピアノ発表会の時もそう、どうしてパティちゃんが彼の隣に座っているの?
あの時、精一杯の勇気をだして私に出来る告白をしたの。
パティちゃんが隣にいるの知っていて無視したの。どうして邪魔するの?」
「…違う、あたしはただ……」
シーラの話は支離滅裂だった。
憎しみや思いで、懺悔がゴチャゴチャに入り混じっていた。
「パティちゃんはずるいわ…あの人の事、好きなら好きって言ってくれれば諦めもついたのに…」
パティの体に雫が落ちた。
「シーラ、あんた泣いてるの…?」
「私……」
ビチャッ…
「えっ?」
パティの顔に紅い液体が飛び散った。
パティから見るとシーラの胸から刀が生えたように見えた。