幻の章−15『間違った強さ2』
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「会えて良かったわパティちゃん。ずっと探していたのよ」
恐らく全ての異性だけでなく、同性すらもその表情を見たら頬を染めてしまうであろう
ほどの魅力的な美しい顔でシーラは微笑んだ。
「シ、シーラさん!? いったい何を?」
ディアーナには何が起こったのかさっぱり解らなかった。
(シーラさんが突然現れて、凄く綺麗な顔をしていたから思わず見とれてしまって
…バッドを振り上げたから不思議に思って声をかけて、
そしたらパティさんがそのバッドで殴られて倒れて
…その時何かが引っかかってお鍋がひっくり返ったんだ)
いや全て見てはいたのだ。ただありえないことであったから脳が理解できなかった。
「…シー…ラ?」
パティが呟くような小さな声で声を発した。
「パ、パティさん!!」
その声でディアーナは止った思考をようやく動かす事ができた。
「ふふ、パティちゃん思った通り頑丈なのね」
シーラはクスッと笑うとまたバッドを振り上げた。
「だっ、だめぇっ!!」
ディアーナがパティの前に飛び込むより早く、シーラはバットを振り下ろした。
ゴキィッ!!
「…っう!!!」
「ひいっ!」
耳を塞ぎたくなる程の鈍い音が響く。ディアーナは悲鳴をあげた。
パティが左腕でバットを防いだらしい。がその腕がダラリと下がった。
(間違いなく折れてる)
ディアーナは気絶しそうになった。
「…もう、しょうがないわねパティちゃんは」
シーラが苦笑しながら三度バットを振り上げる。
「パティさんが死んじゃう! シーラさんもう止めて!!」
怖くて動けない。ディアーナは声をあげるしかなかった。
ゴーーーーン…
「いやあっ!…ってゴーーーン?」
ドラを鳴らすような音が聞こえ、ディアーナは目を開ける。
「やあシーラ、会いたかったよ」
シーラ振り下ろしたバットを転がっていた巨大鍋で受けとめたのは
悠久学園高等部3年 アレフ・コールソンであった。