久の章−17『雨宿り』


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 2人の少女が雨を避ける為、森の中に建てられた小さな小屋に身を寄せていた。

 

「雨止みませんね更紗様」

「…うん、外、もう真っ暗」

 クレアと更紗は森の中アルベルトを探していたが、突然の大雨が振り出した為に

近くにあった小屋に入り込んだ。単純に雨や風を避ける為だけに作られたのだろう、机や椅子さえもない。

「今晩はここで過ごす事になりますわね。小屋が見つかっただけ良かったですわ」

「…うん」

「それではお食事にしましょう。フフ、なんだかキャンプみたいですわね」

「…」

「? どうかなさいましたか更紗様?」

クレアはジッと自分を見つめる更紗に首を傾げた。

「…ワタシ平気だから…クレア無理しないで」

「!!…そうですわね、私の方が平気ではなかったみたいです」

 

 クレアはそっと更紗を抱きしめた。

2人はランディの放送を聞いていた。

マリアとセリーヌの死を思い出させ、そしてヴァネッサも死んだという。

 他の生徒は嘘だと思い込む事が出来るかもしれないが、マリアとセリーヌの死を

目のあたりにした2人にはそれが事実であると理解する他なかった。

 その為クレアはその放送を聞いていない事にした。

その話題を更紗に決して話さず、無理に明るく振舞っていたのだ。

「帰りたい…早く帰りたいですわ」

「…うん」

 

帰れない。

 

 更紗は例え悠久学園に帰る事が出来たとしてももはや自分が大好きだった学園には

帰れないという事を理解していた。

 

もうセリーヌやマリア、ヴァネッサはいないのだから。

 

 

「うわ〜っ、ひでえ雨だぜ…」

二人が悲しみにくれていた時、小屋の扉が開かれた。

悠久学園3−C アレフ・コールソンであった。

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