久の章−13『ライシアン』


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「どうしてよ…この子が何をしたって言うのよ? 真直ぐに、純粋に生きたメロディを誰が殺したのよっ!!」

 既に冷たくなっていたメロディをいとおしく抱きしめる由羅はそう叫ばずにいられなかった。

メロディの首筋に人間の手で締められた跡があった。絞殺されたらしい。

「…殺してやる! メロディが味わった以上の苦しみを与えて殺してやる!!」

 

誰が殺した?

ランディ?奴も原因のひとつだ。

仲間だった筈の人間が殺した…メロディの首を絞めて!!

そう人間だ。このゲームを始めたのも人間だ!

それを楽しんでいるのも人間だ!!

 

人間がメロディを殺した!!

 

「ちょっとだけ待っててねメロディ。お姉ちゃんもすぐに行くわ。

 アナタを殺した人間を、アナタを救えなかった人間を全部殺したらすぐにね。だからイイ子でお留守番しててね」

由羅は立ちあがり、メロディを木に寄りかからせながら座らせるとメロディの手にそっと鈴を握らせた。

 

その時、リーゼの拡声器を使った声が由羅の耳にも届いた。

 

『マリアちゃんは…助けられなかったけど、だけど元生徒会長として宣言します、私はみんなを殺させない。

 だから私を信じて、そしてみんな一緒に悠久学園に帰りましょう!』

 

「…人間なんて勝手だわ、メロディを殺しておいて。メロディのいない学園なんて無くたっていい」

リーゼの放送は今の由羅にとって人間の見苦しい偽善以外の何物でもなかった。

最初の目標が決まった。由羅はリーゼの声が聞こえた方角へ真直ぐ歩き出した。

 

雨が振り出した。

 

降り注ぐ雨の雫が流れ、

メロディが大粒の涙を流しているように見えた。

 

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