久の章−7『リーゼ動くA』
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『みんな聞いてください』
キ―ン!!と、耳を劈くようなハウリング音の後、拡声器を使ったリーゼの声が島に響いた。
リーゼとシェールは小高い丘の上にいた。少しでも自分達の姿が他の生徒に見える様に。
『こんな馬鹿な事に参加する必要は無いわ! 同じ悠久学園の生徒が、
一緒にミッション授業を受けた仲間である私達が殺し合う必要なんてないもの。みんなで集まりましょう、
ここから脱出するにしても、ランディ先生に抗議するにも、私達は集まらなければならないわ』
リーゼは1度拡声器のスイッチを切り、深呼吸する。
「お姉ちゃん」
「大丈夫よシェール、みんなで悠久学園に帰りましょうね」
心配そうに見つめる妹に笑顔を向けるリーゼ。
『マリアちゃんは…助けられなかったけど、だけど元生徒会長として宣言します、私はみんなを殺させない。
だから私を信じて、そしてみんな一緒に悠久学園に帰りましょう!』
その時、シェールの頬に水滴が当たった。シェールが空を見上げる。どんよりと曇った空だった。
「あ、雨…」
ポツポツと雨の雫が落ちてきたがリーゼは声をあげるのを止めなかった。
『まだ大丈夫だから…だからみんな馬鹿な気は起さないで! 誰も殺し合いなんて望んでいな…』
雨が強く振ってきた。
だからシェールはリーゼの声が聞えないのは雨の音のせいだと思った。
「お姉ちゃん、この雨じゃ誰にも聞えないよ。…お姉ちゃん?」
隣に立っていた筈のリーゼは胸を押さえながら、何故か仰向けに倒れていた。
「…シェ……ルっ」
「お姉ちゃん? え、嘘…でしょ?」
雨に濡れたリーゼの制服からジワジワと赤い血が滲んできた。
「嘘…お姉ちゃん?…嫌、いやあああああああああああああああああぁぁぁぁッ!!!」