久の章−4『リーゼ動く』
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「お姉ちゃん、今の放送…セリーヌさんとヴァネッサさんが」
シェールはカタカタと奮えながらリーゼにしがみ付く。
「…」
「お姉ちゃん?…!!」
シェールは返事の無いリーゼを見て思わず息を止めた。
(こんな怖い表情のお姉ちゃんを見た事が無い)
「…間に合わなかった」
「えっ?」
「私がもっと早く行動していればセリーヌさんもヴァネッサ先生も死なずに済んだかもしれないわね」
リーゼはシェールを強く抱きしめた。
「お、お姉ちゃん苦しいよ」
誰が殺したのかは解らない。
しかし犠牲者の2人の人柄を考えればどうして殺されたのかはリーゼには手にとるように解った。
…相手を信じてしまったのだ。
(違う、信じるのは当たり前だわ。自分達は同じ学園の生徒であり、ミッション授業を共に受けた仲間だもの。
それを裏切った人がいる。)
それが誰なのかリーゼには想像も出来なかった。
「シェール、これからどうしようか?」
「? 何いってるのお姉ちゃん、みんなが助かる方法を見つけたってさっきいってたじゃない?」
「それは…もう殺し合いが始まっては多分手後れだから」
「何言ってるのお姉ちゃん、私達が殺し合いなんてするわけがないじゃない!!
きっとランディ先生がみんなを騙す為に2人を殺したのよ! そもそも死んだってのが嘘臭いわ、
あの運が強いセリーヌさんが死ぬなんて思えないもん」
シェールは突然立ち上がりいっきに捲くし立てた。
シェールの突然の変化に目を丸くしていたリーゼはクスッと笑った。
「そうねシェール、見てもいないのに死んだなんて決めつけるのはおかしいわ。行きましょうシェール。
みんなで助かるには少し場所を変えないといけないわ」
「うん!」
リーゼとシェールは立ち上がり、歩き出した。
セリーヌとヴァネッサが死んだというのは本当だろう。本人が生きていればこんな嘘に意味は無い。
ランディ先生の話そのものを誰も信用しなくなるのはランディ先生にとってメリットが無さ過ぎる。
ランディ先生が2人を殺したというのも違うであろう。全員をただ殺すだけであれば
ドームですれば良かったのであるし、こんな島に連れてくる必要が無い。
『金持ちの道楽』というのも信じられない。別の理由がある筈であった。
リーゼはそれら全てを理解した上で歩き出した。
これ以上の犠牲者を出さない為には今自分が行動する他無いと判断したから。