悠の章−19『更紗とクレア2』


 

 

19

 ひとしきり泣き続けた後、更紗はクレアにそっとハンカチを差し出した.

 クレアが申し訳無いと思い、自分のハンカチを出そうとしたが、

既に血塗れで使えない物になっていたのを思い出し、更紗のハンカチを受け取った。

「…更紗様、ありがとうございます」

クレアは目を真っ赤に腫らしながらも更紗に微笑んだ。

(更紗様が頑張っているのに…年上の私が泣いていてはいけませんわ)

 クレアは勢いよく立ち上がると大きく深呼吸した。

「クヨクヨしていられませんわ! このような馬鹿げた事一刻も早く止めなければなりませんわ。

更紗様、私にい様を探すつもりなのですが御一緒いたしませんか?」

「…アルベルトさっきまで一緒だった」

「えっ?にいさまと御一緒だったのですか? それでにいさまはどこに?」

「…少し前に別れた。クレアを探すって」

「に、にいさまったら何をしているのかしら?私が先に出ていたら扉の前で待っているに決まってますのに…」

クレアはいれたばかりの気合が少し抜けるのを感じた。

「…まだそんな遠くに行ってないと思う。一緒に行く?」

「そ、そうですわね。それでは宜しくお願い致します」

「…うん」

 

 更紗は森に隠れるのを止めた。

 

 そんなに親しくなかったこの兄妹だったが、

自分を本気で心配してくれたアルベルト、

自分の大好きだったセリーヌの為に泣いてくれたクレア。

この2人がとても好きになったから。

 

そして2人を見て、何故かルシードに会いたいと思った。

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