悠の章−20『アーキス姉妹』
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建物を出てすぐに妹に会えたのは幸運だった。
出来れば信頼出来てリーダーシップの取れるルシードやアレフとも合流したいと考え、
扉近くの森に潜んでいたが一向に出てくる気配はなかったので、
高台から建物を見下ろした時、自分の間違いに気付いた。
この巨大な建物には四つの扉があったのだ!
「お姉ちゃん、どうしたの?」
自分の険しい表情に気付いたのだろう、悠久学園2−Cシェール・アーキスは姉である私、
悠久学園大学4年、教育学部リーゼ・アーキスに話し掛けた。
「扉が4つあったの。これではいつまで待っていてもルシードくん達と会えないわけね」
「…そう」
シェールはあからさまに気落ちした声で返事をした。
「それでこれからどうするの?」
「そうね、もう少し誰かを探すというのもあると思うけれど…この状況下に中等部の子達が耐えられるかしら?」
「…わかんないよそんなの」
そう、解らない。ただしリーゼはこの先自分がどうすればいいのかだけはわかっていた。
「ちょっと自分の荷物を見てみましょうか? 何か役に立つものがあるかもしれないわ」
リーゼはリュクを下すと、荷物を調べ始めた。
「うん、わかった」
シェールも荷物を調べた。
「…彫刻刀。駄目ね、武器にさえならないし、私には必要ないわ。シェールは何かあったかしら?」
「…こんなのが入ってたんだけど? これ武器じゃないよね」
シェールが荷物から出したのは『拡声器』だった。
リーゼの表情が明らかに輝いた。
「それよシェール! これでなんとかなるわ」
「え? え? 何? お姉ちゃんどうしたの?」
「この『拡声器』でみんなを探す手間も省けるし、助かる方法もすぐ伝わるの。
最悪でも私達だけでもなんとかなるわね!」
「そ、そうなの?」
「ええ、問題はタイミングね。やっぱりルシードくんかアレフくんに使ってもらう方がいいのだけれど…」
その時、島中にチャイムが鳴り響いた。