悠の章−15『アレフとクリス』


 

 

15

 悠久学園高等部の留年生であり、生徒会長でもある、3−Dアレフ・コールソンは

頑丈なパイプ椅子を担ぎながら黙々と森の中を歩いていた。

 額に滲んだ汗を手の甲で拭う。

「無駄に重たいな。少し休むか」

アレフはパイプ椅子を広げて腰掛けた。

「ふー、やっぱりパイプ椅子は便利だぜ、疲れた時いつでも座れるしな。

 相当重たくて森の中持ち歩くのに体力を使うけどこの座りごこちを考えるとやっぱ持ってないとな」

 

…沈黙。

 

「そんなわけあるかー!」

 座っていたパイプ椅子を放り投げる。

「なんでこんなもん持ち歩かなきゃいけないんだバカバカしい!

だいたい何でこんなもん持ってるんだっけ俺は?」

 

建物から追い出された数時間前を思いだす。

 

『これが食料等の荷物、そしてコレがお前の武器だそうだ』

そういって黒服に渡されたのはパイプ椅子だった。

『パイプ椅子?こんなもんどう使うんだ?』

『知らん。自分で考えるんだな』

 

あの時の黒服は絶対笑っていたとアレフは思った。

「パイプ椅子ってプロレスラーじゃあるまいし…まあいいや、さっさと先に進むか」

アレフはまた歩き出した。先程と変わって足が軽い。

「もっと早く捨てとくんだったなあ」

苦笑しながら森を進む。

「アレフ君!!」

その時、後から嬉しさを押さえ切れないといった感じの声が聞こえ、アレフは振り向いた。

 

声をかけてきたのは悠久学園高等部1−Bクリストファー・クロスだった。

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