悠の章−14『シーラ3』
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シーラはむせ返るような血の臭いに軽い目眩を起こしながらも目を覚ました。
「嫌な夢…」
憔悴仕切った顔。目もどこか虚ろだった。
「私、どうしたらいいのかしら」
シーラは深い溜息をついた。
『行ってこいよ! 留学…』
片思いの彼の言葉。胸が苦しかった。
『あんな奴何とも思ってない』
パティちゃんの心にも無い言葉。何か心に黒い塊が出来た気分だった。
『いいかガキども! 今から貴様らには殺し合いをしてもらう』
そしてランディ先生の信じられない言葉。
しかしランディ先生の言葉を思い出した時、シーラは心が軽くなった気がした。
「ふふ、そうよね。だって先生が殺し合いをしろって言うんですもの。
先生の言う事は聞かなくちゃいけないわ。私は先生の言うことを良く聞く、優等生ですもの」
シーラは荷物に入っていた金属バットを取り出すと歩き出した。
魅力的な笑顔を浮かべながら。
ビチャッ…ビチャッ…ビチャッ。
まるで気付いていないのか血の池を避ける事無く真直ぐに。
果してシーラが壊れたのはいつだったのだろう?
セリーヌの死体を見たとき?
血の池に浮かぶ紅い髪を見た時?
それとも
彼に『行ってこいよ! 留学…』そう告げられた日だったのか…