悠の章−11『白き獣』
11
少年は泣いていた。
バリッ…グチャ…クチャッ…
獣が捕えた獲物の肉を引き裂いている。
「やめて…やめてよ…」
泣いている少年は白き獣に向かって行為を止めるよう嘆願していた。
グチャッ…クチャッ………ビチッ!!
獲物は咽元を食い破られた為、血しぶきが跳ねて少年の顔に当たる。
「ヒッ!!」
グシャッ!!
血が跳ねた部分、咽元を前足で潰す。
「ああ…違う、違うんだ、もう止めて、止めてよ」
白き獣は獲物に牙を立てる事を止めない。
少年が本心から行為を止て欲しいと願ってはいない事を知っているから。
少年にとって永遠とも思える時間、獲物がほぼ原型を留めなくなるまでの5分間、
白き獣は牙を立てる事を止めなかった。
「酷いよ…ボクはこんなこと望んでないのに…消えて、消えてよ!!」
白き獣は少年を哀しげな目で見つめ、空気に溶けるように消えていった。
そして…
血の池に浮かぶミンチとなった肉の塊。獣の陰になっていた光景がそこにあった。
「あ…うあ、あああああああああああ!!!」
バシュッ!!
ミンチとなった肉片さえもが弾け飛んだ。
「ビューティ…」
1度は消えた白き獣が再び現れ、風の魔法を使った。そしてまた…消えた。
少年を、リオを不快にさせた肉片は彼の望み通り消えた。
後に残ったのはたった今出来た血の海と、紅色の長く美しかったであろう髪がただあるだけだった。
悠久学園 高等部2−C担任 ヴァネッサ・ウォーレン 脱落