悠の章−10『お玉』
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「ディアーナ、あんた何してんの?」
「そんな…パティさんが鍋を投げつけてあたしを木から落したんじゃないですかー、
うう、たんこぶできてないかしら」
不満げな目でパティを見上げるディアーナ。
「ご、ごめん。あ、そうじゃなくって、何で木の上なんかにいるのよ?」
「高い所に登ればみんながすぐ見つかるんじゃないかなって思って山を登っていたんですよ。
でも少し疲れたので木の上でもいいかなって思いまして」
「…誰かみつかった?」
「はい、パティさんが」
(高い所に登ったのと関係ないじゃない…)
とパティは思わず口に出そうとしたがニコニコと自分を見つめるディアーナには何も言えなかった。
「パティさんこそ突然鍋を放り投げるなんて何があったんですか?」
「え? ああ、それは…」
パティは先程の経緯を話した。
「…パティさんにとっては充分武器になってるんじゃないですか?」
鍋がヒットしたのであろう頭をさすりながら転がっている鍋を見るディアーナ
「わ、わるかったってば、もう」
「でも鍋いいじゃないですか。山菜鍋でも作りましょうか?」
「ディアーナ、あんた馬鹿にしてる?」
「違いますよパティさん。だいたいあたし達が殺し合いなんてするわけ無いじゃないですか。
武器なんて必要ないんですよ」
「…それもそうね」
孤島に連れ込まれた事、ランディ先生の豹変、そして…マリアの死。
あまりにも非現実的な出来事が続いた為、自分の感覚が麻痺していたのかもしれないとパティは思った。
「ディアーナ、あんた凄いわね」
「えっ? 何がですか?」
「さーね。それでディアーナは何を貰ったのよ?」
「あ、まだ見てませんでした」
ディアーナは荷物を下し、中を覗く。…『お玉』が入っていた。
「…鍋、作りましょうか? あの、パティさん、…必死に笑いをこらえるのやめてもらえませんか?」
パティは目に涙を浮かべながらディアーナの肩を慰めるように叩いた。
…バトロワは?