悠の章−9『鍋』
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「なんなのよもう!」
悠久学園高等部3−B、パティ・ソールはかさばる荷物を背負いながら山を登っていた。
「高い所からこの島を見渡せばみんながすぐ見つかると思ったけど…」
体力には自信がある…が
「だいたいこの荷物がかさばってるのが悪いのよ!」
怒りを背負っている荷物にぶつける。
「そういえば何が入ってるのかしら?」
パティは立ち止まり、荷物を広げ出した。
ミネラルウォーター…これは解る。
携帯食料…これも解る。
島の地図…なきゃ困る。
鍋………………なによこれ?
この携帯食料で鍋など使わない。
それもただの鍋じゃない。
ドリフのコントで空から落ちてくるタライの大きさに匹敵する大人数用の鍋であった。
「…必要ないじゃない。山菜鍋でも作れってのかしら?」
腕を組み思案する。そういえばランディ先生が何か言っていたような…
『武器には当たり外れがあるから、使えないのに当たったら運の悪さを恨むんだな』
「…武器ってこれ?」
両手で巨大鍋を掴む。当たり外れどころかそもそも武器ですら無い。
パティは怒りで小刻みに震えた。
「馬鹿にしてっ!!」
パティは鍋を目の前の大木の上に投げつけた。
パコ〜ン!!
「きゃああああっ」
ドサッ!!という音と共に揺れる木の上から人が落ちてきた。
「いたたたたぁ…酷いですよパティさん」
落ちた時ぶつけたのか、腰を摩りながら涙目でパティを見上げるのは
悠久学園高等部1−C、ディアーナ・レイニーであった。