悠の章−4『更紗の暗闇』
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更紗は真っ暗な闇の中、高さ2メートルの地点で凄まじい早さで飛んでいた。
(…あたしも…殺されちゃうんだ)
心を絶望に囚われたまま。
重い荷物を渡された後、知らない人に外へ追い出された。
ギィィッという扉の閉まる嫌な音は全く気にならなかった。。
目の前に血塗れで倒れているセリーヌの姿が飛び込んだから。
「…セリーヌ!?」
更紗はセリーヌに駆け寄る。
…暖かい。
「…セリーヌ! 起きて」
肩を掴んで揺するが全く反応が無い。
体を持ち上げる。…凄く重たい。首かカクンと下がる。
「…セリーヌ! セリーヌ!!」
…まだ暖かかったセリーヌの体はどんどん冷たくなって行った。
「…駄目! 死んじゃ駄目!!」
セリーヌが最初から呼吸をしていない事にも気付かず更紗は必死にセリーヌにしがみついていた。
だからまた扉が開いた音を気にも留めなかった。
「…嘘だろ?」
アルベルトがドームからだされて最初に見た光景はどうみてももう死んでいるであろう
血塗れのセリーヌを必死に抱き起そうとしている更紗だった。
「おい更紗、いったい…?」
「…セリーヌ! セリーヌ!!」
更紗はアルベルトの存在自体気付いていなかった。
(あーっと、考えろ! まず信じられない事だがセリーヌが死んでる。
で、更紗が必死でセリーヌを起そうとしている。
死んでる事に気付いてねぇんだ、かなり錯乱してる。
以上か? 違う! 死んでるって事は殺した奴がいるんだ!!
ここは危険で、錯乱してる更紗は…危ない!)
決意するとアルベルトは素早かった。
セリーヌにしがみついている更紗を自分の肩に担ぎ上げ、走り出した。
「嫌!…放して。セリーヌが…」
「駄目だ、あそこは危ない。それにセリーヌは…もう死んでいる」
鎮痛な面持ちでアルベルトは事実を伝えた。
「…!!」
そして更紗は絶望に包まれ、目を閉じた。