東京都が住民無視の工事説明会を開催
去る9月7日、有明コロシアムにおいて、東京都港湾局主催による有明北地区埋立事業の工事説明会が開催された。本来なら話し合いの対象になるのは地域住民ということになるが、説明会の案内が届いたのはほんのひと握りの住民だけである。
このことから、説明会そのものの目的は「着工前の段階で、住民に対し工事の説明を行なった」とする事実形成にあることは明白である。また、実際に約200名以上の参加者を数えるなか、その大半はゼネコン関係者(港湾局関係者談)だったことも、埋立事業そのものが住民不在の中で進められていることを如実に表わしているといえるだろう。
ただし、無視されたはずの反対派住民や船宿関係者、そして『江戸前の海十六万坪(有明)を守る会』のメンバーも情報を聞きつけて会場を訪れていた。内輪で参加者を集めた偽装の説明会を開催することで、平穏無事に事をおさめようと考えた東京都の思惑は、完全に外れる形となったのである。いや、むしろこの説明会開催の意味を東京都側から見たと仮定すれば、マスコミ関係者の目前で住民無視を続ける姿勢をあからさまにしてしまったのだから、いたずらに混迷の度を深めたにすぎないといえる。これが現在の東京都の現実であり、また、いまだ現地を視察しようとしない石原慎太郎都知事の姿勢についても、港湾局と同等と考えざるをえないだろう。
工事説明会は冒頭から、東京都のやり方に不信感を抱く発言が集中した。江東区内では住民が皆無に近い有明コロシアムが会場であったこと。また江東区では同日に国勢調査の説明会が行なわれており、自治会の主要メンバーが不在であったことなど、まるで国勢調査の日に合わせるかのように工事説明会が開催されたことで、より不信感が高まる結果になったのである。
説明会は、会場からさまざまな質問が飛び交うなか、それを無視する形で一方的に議事が進行されてゆく。それは説明会とはほど遠い内容であり、あらかじめ用意した原稿を棒読みするだけのことだ。「質問に答えてください!」と叫ぶ住民の声に全く耳を傾けず、「皆さまがたには、東京港の警備運営に何かとご協力順き、誠にありがとうございます。有明北地区の開発につきましては……」と、テーブルに置いた原稿を淡々と読むだけの港湾局職員。このような形で「住民説明を行なった」、「住民の理解は得られた」として開発が進められてゆくのである。
日本の民主主義の現実を改めて目の当たりにしたといえばそのとおりだが、石原都知事を長とする東京都よりも、今や建設省のほうが住民の声に耳を傾ける姿勢はいくらかマシとも感じられる。それはまるで、かつての建設省を見ているかのようでもあり、東京都がこのままの状態で工事を着工するようなら(本誌が発売される頃はすでに着工されている可能性が高い)旧態依然とした東京都のやり方と同様に、石原都知事もかなり古いタイプの政治家といわざるをえない。