十六万坪(有明貯木場)の埋立て中止と計画の見直しを求める申入書
有明貯木場は多くの人々から江戸前の海「十六万坪」の愛称で親しまれている水域です。9月13日、東京都は埋立工事を強行着工しました。
本日、十六万坪の保全と埋め立て中止を求めている「江戸前の海十六万坪を守る会」は、知事と工事を強行した関係局と業者に対し強く抗議するとともに、ただちに工事を中止するよう求めます。
私たちは埋立ての必要性、環境問題、水生生物等の保全に対する配慮など埋立事業計画について、慎重に対処することを求めてきまLた。
これまでの水生生物の生息に関する環境調査をはじめ、私たちが指摘してきた問題点について必要十分な調査・検討がなされたか疑問です。「江戸前の海」といわれる旧有明貯木場は、波風の影響を受けない東京港に残された貴重な浅場です。マハゼをはじめキス、スズキ、海老、アサリ、蟹など多くの魚介類が生息しており、最近では絶滅危倶種ヒいわれるエドハゼの棲息も確認され、多くの稚魚が成長する「ゆりかご」の役割を果たしている貴重な水辺です。
東京都は埋立てて住宅を建設するといいますが、住宅の基本計画は12年前に策定されたものです。いま臨海部周辺において1996年以降に建設、または建設中の住宅が17.000戸近く(計画中のものは含まず)に達しています。また、臨海副都心地域内には住宅立地可能な未利用地が多く残されているなど、いまや住宅建設のために貯木場を埋め立てる必要は全くなくなっており、さらに都は財政危機などを理由に、公営・都営住宅の建設から撤退するなど矛盾した方針を打ち出しています。
埋立計画内容と問題点が都民の前に明らかになるにつれ、地元住民、自然保護団体、つり愛好者、釣り舟・遊漁船業者などの埋立ての中止と計画の見直しを求める運動と世論が広がり、マスコミも注視し、8月11日には世界的に重要な、湿地の保全に取り組んできたNGO(非政府組織)のWWF・ジャパン(世界自然保護基金日本委員会)も十六万坪の埋め立て反対を正式に表明、「豊かな水辺環 境は代替性がなく、十六万坪は保全すべきだ」と指摘、、ハゼ類を中心とする江戸前の魚の生息場所で稚魚が育つ「ゆりかごとして、東京湾では貴重な浅場であることから、「環境保全上特別の配慮を要する埋立」とする見解を発表、「十六万坪」の保全.埋め立て中止を求めています。
私たちは、東京港の奥にすばらしい自然環境が残っていることに喜びを感じています。ところが、都の「こっぱ役人」はこのすばらtい環境を守るのではなく埋めようと{ています。大変おろかなことです。
都が示す有明北地区のまちづくり計画は、住宅建設を建前に貴重な海辺を埋める自然破壊であり、高速道路を含む幹線道路(計20車線)の建設による大気汚染・騒音:交通渋滞などの環境破壊を公共事業の名のもとに正当化-、財政負担を含めそのツケを都民に押し付けるものです。
バブル経済が崩壊し、開発財政の破綻が誰の目にも明らかになっているにもかかわらず、臨海開発推進に固執し、貴重な海辺を埋めるという愚行にしがみついている姿には民意はありません。
運輸大臣の認可を機に関係地域住民に対するまともな説明もなく、工事を強行着工したことに強い怒りを感じています。工事を直ちに中止してください。
私たちは十六万坪の保全、埋め立て中止、計画の見直しを知事に求めます。
2000年9月19日
東京都知事 石原慎太郎 殿
江戸前の海十六万坪(有明)を守る会
会長 安田進