[江戸前の海十六万坪(有明)を守る会]
情報、其之拾六   2000.9.11
[ 強行着工を許すな! 新たな運動の開始
 
埋立工事着工にあたっての声明
 
         埋立工事着工にあたっての声明
  旧有明北貯木場埋立工事の強行着工に断固抗議し、都に対して十六万坪を守る会との話し合いの
  テーブルにつくことを強く要求すると共に、今後とも粘り強く闘うことを改めて表明する

                               2000年9月11日
                            江戸前の海十六万坪(有明)を守る会
                                     会長 安田進

 東京都は本日、臨海副都心開発の一環である旧有明北貯木場の埋立工事について、多くの都民の反対や疑問の声を無視して、強行着工を試みた。都は、「7日に工事説明会を行っており、強行着工ではない」と言うであろうが、地元のごくわずかの住民にだけ知らせたわずか1回の説明会で、このように豪語するのであれば、まさに都民無視の愚行と言わざるを得ない。しかも、説明会では、多くの参加者から計画に対して批判・異論の声が相次ぎ、これらに対して、都側はまともに答えることが出来なかった上、一方的に説明をうち切り、逃げるように退席してしまったのである。

 批判の第一は、工事の先行契約についてである。運輸省が不当にも埋立を認可したのは8月17日だが、都はこの6ヶ月も前の2月に工事契約を業者と結び、既に前払い金まで払っていることが明らかとなっている。都は、「埋立免許がおりると確信していたので契約した」「公有水面埋立法によれば、現地で工事を行わない準備行為などは着工にあたらず、違法ではない」と述べているが、「確信」するのは勝手としても、運輸省の意向など全く目もくれず認可されていないうちに公金を使ってしまうことが許されるのであろうか。バカにされた運輸省が黙っていることも不思議である。もし、法が「違法ではない」と言うのなら、その法が間違っているのである。

 現に公有水面埋立法は、明治憲法下の大正10年に制定された法律であり、多くの問題が含まれている。例えば、憲法29条では財産権について規定しているが、公有水面埋立法は旧憲法下の規定であるため、海面使用者の財産権を無視する形となっている。都は、漁業関係組合の同意をとっていると言うであろうが、現憲法における財産権の趣旨に照らせば、組合所属の有無を問わず、全ての漁民・遊漁関係者の同意をとり、補償を行う必要があるのではないだろうか。財産権を持つ人々の権利の方が埋め立てる側の権利より強い(7/22三番瀬を守るシンポジウムにおける明治学院大学・熊本一視氏講演より)のである。

 8月8日に埋立反対の海上デモを行った東京都遊漁船協同組合が工事着工に同意したと言われているが、現在集約途中であるにもかかわらず、同組合の組織数を上回る船宿が私たち十六万坪を守る会への入会の意思表示を行っており、埋立反対を主張している。
 学者・研究者、法律関係者、弁護士の皆さんが古色蒼然とした公有水面埋立法について研究し、その民主的改正に向けて取り組んでいただくよう要請する。

 批判の第二はハゼを始めとした魚介類の生息についてである。多くの釣り人・漁業関係者等が十六万坪をハゼの宝庫と呼んでいるが、都は自分たちに都合の良いデータのみを示し、時には「ハゼはいない」等と暴言を繰り返してきた。環境庁に続き都の環境保全局(当時)自身が絶滅危倶種に指定したエドハゼが十六万坪に生息している事実についても、「東京港の他の海に多く見られる」と述べているが、それならなぜ絶滅危倶種に指定されたのか、環境保全局や環境庁は見解を明らかにするべきである。稚魚と成魚、調査方法・場所など都の調査について指摘すべき問題点は多い。ここでは、東京都が過去においても、そして私たち守る会がエドハゼを発見した本年5月以降も、十六万坪におけるエドハゼの棲息調査を行ったことはないという事実を指摘しておく。

 また、これからハゼ釣りのシーズンに入るこの時期に着工したことも民意を無視していると言わざるを得ない。都の当初の思惑より数ヶ月も埋立免許を引き延ぱしたのだから、今秋のハゼ釣りシーズンに生息調査を行い、科学的データに基づいて徹底的な議論を尽くし、結論を得るべきではなかっただろうか。それが民主主義というものである。認可からわずか一ヶ月足らずの今回の強行着工は、反対世論を封殺するための蛮行としか思えない。東京湾の保全、ひいては地球環境保護の観点から取り返しのつかない罪を犯したことを都は気付いているのだろうか。

 第三に「ゆりかもめの開通に間に合わせるためには一刻も早い着工が必要」という都の説明についてである。ゆりかもめの豊洲延伸については、期待する声が強いとも聞くが、ゆりかもめの軌道だけなら35haも埋め立てる必要等ないのである。危弁と言わざるを得ない。

 第四に、「住民の声を聞け」という当然の発言に対して、都は「住民の代表である『臨海副都心開発懇談会』の充分な議論を経て、今回の開発を行っているので、さらに住民の声を聞く必要なはい」と語ってる点である。これも論弁である。懇談会では東京都の当初の思惑に反して、開発推進派と反対派が真っ二つに分かれてしまい、やむを得ず両論併記の答申を行ったにもかかわらず、青島都知事(当時)が自らの選挙公約を投げ捨てて開発のゴーサインを出したことを、私たちははっきりと覚えている。にもかかわらず、このような言危弁を弄することを、両論併記の答申を出すためにご苦労された当時の懇談会委員の皆さんが許すはずがないと信じる。ぜひ見解を明らかにしていただきたい。

 私たち十六万坪を守る会はこれまで、東京都に対して事業を取りやめるよう求め、運輸省に対しては埋立を認可をしないよう要請してきたが、本日、東京都が工事を強行したという新たな事態を受けて、今後は都民世論の大きな力により工事の中止を求める取り組みを、粘り強くすすめていくことを表明する。

 当面の取り組みとして、9月19日に行動を予定している。正午より新宿柏木公園を出発し、都庁及ぴ都議会に向けて、工事の強行着工への抗議と埋立中止を求めたデモ行進を行う。さらに、14時からは衆議院第1議員会館第1会議室において、守る会主催、鳩山邦夫、柿沢弘治、東洋三、緒方靖夫の各議員呼びかけによる超党派の勉強会を開催する。
 ここには自然保護運動で著名な天野礼子さんが、京都より駆けつけていただける予定である。

 一人でも多くの方々がこれらの取り組みに参加され、東京における無駄な公共事業の典型である
 旧有明貯木場埋立中止を求めて行動されることを、心より切望する。


 
東京新聞9.11 夕刊より
 
 
「ハゼの楽園」埋め立て抗議で着工できず
 
 

 東京都港湾局が11日の着工を予定していた東京港の有明旧貯木場(江東区)埋め立て事業は、反対派の市民団体による抗議行動で同日午前中は埋め立て水域の測量などの作業に入れなかった。
 同貯木場は「江戸前ハゼの楽園」といわれる水域。工事に当たる建船業者は「安全確認が済み次第作業を進めたい」としている。
 都は臨海副都心開発の一環として、旧貯木場約54haのうち約35haを埋め立てて住宅や商業用地などの整備を計画している。
 先月17日に運輸省の認可を受けた。この事業をめぐっては都議会本会議でも計画見直しを求める意見が出たが、石原慎太郎都知事は「マハゼは東京湾のほぼ全域で生息。東京港全体から見れば十分生息していけると考える」として、予定通り実施する方針を表明していた。
 港湾局によると、工事期間は5年で、費用は400億円。住宅、商業用地などのほか、公園緑地の盛備を進めるという。

  『孫の代まで守る』反対派

 東京港・有明旧貯木場てば11日早朝から、都の埋め立て事業に反対する市民団体「江戸前の海十六万坪を守る会」(安田進会長)などが「江戸前ハゼの楽園を守れ」と抗議活動を行った。
 雨交じりの天候の中、釣り船業者らの約20隻の船が「埋め立て反対」と書いた旗を掲げて集結。工事関係船が入れないように、埋め立て予定水域への入り口となる防波堤の間全3カ所を船でふさいだ。
 建設業者の名前人りの旗を掲げた船が抗議行動の模様をビデオ撮影しているのを見つけ、数隻の船が取り囲んで「私たちは毎日、これ(抗議活動)をやって工事も、測量もさせない」とアピールした。
 守る会の釣り船業者高橋芳広さん(66、江戸川区)は「ここは東京港随一の自然の宝庫、私たちにとっては仕事場であり、都民にとってはハゼ釣りを楽しむ貴重な場所だ。都は形式的な説明だけで、一方的に工事を強行しようとしている。孫子の代までこの海を守らなくては」と話していた。