[江戸前の海十六万坪(有明)を守る会]
情報、其之拾之弐   2000.7/20
[ 講演 マハゼから見た東京湾
丸山 隆 (東京水産大学)P.2

10 羽田沖合の埋め立てでは地元の研究所と
  して、自費で、羽田の埋め立て地の手前で
  調査しています。

 また、羽田沖合は、羽田空港の拡張工事でカレイやハゼの
産卵場所でしたから、沖合に房総半島の山にある粗砂を大量
に投棄しています。
しかし、その埋め立てに使う泥が、本来細かい砂地であるところ、砂粒が大きすぎたために、ハゼを
はじめ多くの魚が産卵できない状態で、結果として浅瀬が魚が使えない場所になって、死んだ状態にあり
ます、
 羽田沖でのマハゼの再生のためには、ゼロからはじめることになります。水域の生態系で最も重要なこと
は分かっていることをやるべきだという事です。

11 酸素の供給源としては
 (1) 水面からの波 (2) 水草による光合成 (3)植物プランクトンによる光合成

 (1) 水面の波によっても酸素が供給されます、このために浅瀬の存在を抜きには話せません。
 (2) 光合成は、東京湾では川からの濁りで海面が暗く、為に逆に植物が酸素を奪う状況にあります。底面
    にはかろうじて赤い藻類の仲間が残っています
 (3) またプランクトンによる光合成も重要ですが、東京湾はあまりにプランクトンが多すぎて、水面を
    覆って、底まで光が届かなく真っ暗な状況となっています。
    水面が濁った状態では、酸素が供給できない。同時に底が暗くて同じく酸素の供給が出来なくなって
   います。水面が泥沼のようになったときには、いずれにせよ酸素の供給が出来なくなります

  ではどうしたらよいか……悩むところ!?

 現在東京は、水資源も相模川から中川、利根川まで近県の水資源に依存しています
自然の限界を超して、ありのまま残さなくてもハゼが残せるか
周りの環境が何かやりますと言っても、何も大東京の中に残しておく必要はないとの考え方と
人口を増やすほど無理、制御する側に責任があります。
 但し、これ以上東京を膨らませていいものかとの基本的な疑問を持っていただきたい

1 いま、人口をこれ以上増加させるための施策が本当に必要なのかとの語りかけが必要です。
 日本が維持していける自然の総量を把握する必要性があります
 これ以上の自然破壊を伴うことの危険性を認識すべき段階に来ていると認識しています
  東京の為政者が(石原知事を含めて)、あまりに環境破壊に関して無知であることに愕然とします。
 恥ずかしい限りです。
 やってみて大丈夫との確信と成功した事例があってあってこそ初めて可能になります
 土木、港湾局等の独断専行には困ります。少しでも話を聞いてくれれば、きちんと調査と情報開示をして
 くれていれば、ここまで事態を悪化させることもなかったと思います
 
2 板橋区で親水公園での例
 子供達が立ち入る、魚が入ってきた。この構造を板橋区の担当者が全国に紹介したら評判が悪い。あんな
まがい物では自然ではないとの解釈。東京の秋川渓谷に子供全員が行ったらどうなるかを考えれば分かろう
と叱った。いま、子供達が、川で遊ぶ、遊ぶ習慣を身につけることが大切かと考えます。

3 人口が1/2になれば公共事業は一切いらなくなる。なぜ制御しにくい方向へ向かうのか? 
 →素朴な疑問、そうなれば安あがりな政府が出来ます
  いまさらこの地区を開発したからと行って、どのような意味があるかを問うべき段階です
  有明十六万坪での埋め立てには、なぜ、貴重な自然を破壊してまで埋め立てなければならないかという
  理由が一切感じ取れない。
  今回の場所も埋め立ててハイテク産業を誘致するとの思惑と聞きました。何のために必要でしょうか。
  有明十六万坪では、東京都側が何を目的としているか、なにも見えてこない。  
  人間にも無理がかかる所では、自然にも無理が及びます
  海には未だ余裕があるだろうとの考え方。人間にキャパシテイが無くなって自然の余裕にまだ甘えてい
  るとしか見えない。

4 二酸化炭素の排出権の事を考えます
 アマゾンの自然保全と、日本の東京の自然がどうか……
 東京都がこれくらいと要求したら、他の地域がその二酸化炭素のの排出権の過剰分を補うことが出来るの
 か。新しい価値観で考えられませんでしょうか。

5 自然の総量としては、すでに東京湾は生きていけない段階に至っています
  有明十六万坪はつり場として保全する事が必要でしょうし、現在、立地として誰も近寄れないのだから
  公園として利用する事が最善だと思います。
 
6 今回の有明十六万坪の問題の根っこには、東京下町での生活崩壊が背景にあると見ています。
  精神的にも、最後のよりどころと考える方が多くなっている
 
7 要は、埋め立てに対して、環境保全を人工物で出来るというのであれば、
  
実験を繰り替えして成功させた結果を持って初めて実施してもらいたいとの要望します。従来のものは
  全て失敗している実績ありと結論しています。そのかわりの手法を徹底した研究で実用化してからでも
  遅くないと考えます。いな、その必要性があります

8 有明十六万坪では、ハゼの保全のための広さとして十分なのか。
  
それは分からない。
 堤防側1/3を埋め立てたり、1/2では……限界がありません。その限界が分かりません
 土木業者は安全係数を高く見ます。しかし自然を対象の場合には限界の数値にみがちです。自然をギリ
 ギリで残す。その考え方はやめて欲しい。
  下町のための広域避難場所等も考えられるが、決して見返りのない自然破壊は許せません。
 1/3を埋め立ててても影響は壊滅的ではないかもしれないが。
 しかし、自然に対しての見返りのない工事は不可である。その準備が出来るまでは有明十六万坪にも、
 工事への手を出すことは出来ないとの認識でいます。
 運河や河川に残っている、水質や地形の重要性を、どこの地域が最も重要な箇所かを知ることから、同時
 に土木課は生物や環境への影響を徹底的に甘く考えてしまうことが多く、これではダメです。
 東京都側は、新たに造る堤防にカニが棲めるような、カニ穴を造る意向とのこと。
 しかし、人工の干潟とかカニの住める堤防作りを言うのであれば、徹底した試作とその評価テストをして
 成功間違いなしとの確信を得てから取り組んでいただきたい。それまでは埋め立てを含め、待つべきかと。




      民主党の議員等から質問として

質問1:(民主党議員)湾口に大きな石があります、それを取り除いたら微生物レベルで影響は?
回答: 護岸を取り除いたとしても、その技術的な手法が理にかなっていれば、微生物も幼生も稚魚も浮遊
していますので、羽田沖も同様ですが、翌年にはあっという間に回復します。しかし、手法が悪ければ永久
に回復しません。但し最も大切なことは、幼生や稚魚の供給源が豊かにあってのことです。

質問2:(民主党議員) 中央防波堤の中から風で散逸した大量のポリ袋が、東京湾内に大量に沈殿してい
るのでは無いかとの質問があった。環境庁では全国で1万〜2万トン
回答:潮が入ると巻き上げられ、海流に乗って湾外の伊豆諸島の大島北東と相模湾の大磯を結ぶラインまで
流出して、台風後等は、長さ数キロのゴミのベルトとなって流れ、沈殿していく模様、湾内には少ないとの
回答がありました

質問3(安田さん)有明十六万坪にはハゼのみで10種類、稚魚は14種類も確認しています。他にこの様
な場所がありますか
回答: 調査情報がないので回答できません。湾口にはもっと多いと思います。しかし、湾奥での事例は貴
重です。しかし、私はエドハゼ等貴重な魚がいるから大切にするとの考え方は取りません。
 当たり前のことですが、ごく普通な魚がまともに生きていけない湾奥が問題です。また貴重な魚がいるか
ら入っては行けないと言うのは、かえっていじり回すことになって反対です。
 稚魚の重要性に注意して下さい。稚魚がこの湾奥に吹き寄せられるにはいくつかの必然性があります。
種類毎に、ある特定の時期に浮遊して行かなければならない事情があります。
 逆になぜ、この貴重なはずの場所を調査していないのか。調査しているのを実見している。出口を調査し
ている。内部は調査していないのか。環境局との関連では、データが取れていない?
 マハゼ/エドハゼ 個体数は少ないが、生息地域/資源は増えつつあると考えています。
 保存の考え方として、特定の種類がいるから保護するのではなく、絶対に生存権のために必要との考え方
にたつべきです。今後増えるのか減るのか?日本ではマハゼでは調査されている程度で、今後の調査待ち、
水生生物調査方法が必要です。 
 同一場所/投網等によって、葛西沖/城南大橋/何れもいいところで採取しています。
 有明十六万坪でも投網等による生物調査を実施しているが、その情報開示がされていません。間違いなく
調査している(実見しているので)資料を早く公開すべきです。
 神奈川県等に設置されている環境モニター制度が東京にはない。明らかに東京は立ち後れている、しかも
データが無いならそれなりに理解できるが、私もデータを収集していることを実際に見て知っているので、
持っていて、ある意図で情報を公開しないとしか考えられない。情報を早く開示すべきであります。
 神奈川県保全局の場合など、インターネットでも検索ででていますから。

質問4:(民主党議員)堤防手前の宅急便会社の敷地も買収、全体を公園にする構想はどうか。堤防側にテ
ラスを置いて有明十六万坪を見せるアイデアは
 回答:十六万坪の有明側に遊歩道は最善です。現在は、人が入っては行けない構造になっています。
上を編み線で覆ったテラス形式で空気が通りやすくする。網入りで海の底にも光のはいる、フランス・パリ
のセーヌ川のテラスの形でお願いしたい。これであれば自然を損なわない。 

質問5:(民主党議員)平井川で、自然環境として、蛇行を加えたらハゼが戻ってきました。
 しかし、10年もかかりました。微生物との関係ですか。
 回答: ハゼの回復は10年はかからないでしょう。問題は、ハゼの産卵場所が、比較的深く、細かい
泥地に穴を掘ります。しかも酸欠にならない場所と言うと、状況は厳しい。
 川と運河は東京にはたくさん残っていますが、石済みの堤防が残っているところは意外に少ない
 これらが、潮が引けば浅瀬が少しでも残っていればマハゼには住み易い。決していい場所でなくても生き
ながらます。
 現在、中央防波堤沖等では、底に棲むべきメバル、ウミタナゴ、アイナメ、シマアジ等の小魚が、酸欠の
ために、堤防の壁に添って上に棲んでいる。5m以下は真っ暗で、かつ酸欠のためです。


        以上、2000.7/5  都議会民主党控え室にての 講演と質疑応答より。
2000.7/21 校了 丸山先生、 荒尾さん、ご協力に感謝いたします。