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T PROOF−そのレンズと画質
買ったカメラで初めて撮ったプリントをみるときはどきどきとするものです。
Tプルーフで実写したプリントをぱっと見た印象は非常にきれいに感じました。ほっとする一瞬です。
まるで「高級レンズで撮ったような」感じです。しかし、子細に見ると解像度は最高と言うわけではなく、解像度の高いレンズで撮ったあのみっちりとつまった感じや線の細さは特に感じません。また色のりはよく原色の濃さはツァイスのものですがGマウントのレンズのような彩度の高さはありません。
なぜそういう「高級レンズで撮ったような」感じを受けるのかと他のプリントを見ていくと気がつきます。それはこのレンズ独特の描写の透明感です。いわゆるヌケのよさ、とでもいうのか、たった4枚しかないレンズの構成枚数の少なさ(つまり光の反射面の少なさ)とT*コーティングのハーモニーがそれをもたらすのでしょう。"しんぷる・いず・べすと"という言葉が思い出される瞬間です。

T PROOF, Reala Ace
買うまではいろいろと情報を集めていたせいもあって、やはり値段のとおりの写りというのだったらどうしようとか、ゾナーT*38をも凌駕する写りというのもCONTAX-Tがかわいそう、などといろいろつまらぬ心配をしていましたが結果はよいほうに裏切られたことになります。
つまりどのレンズともちがった、これ独特の味わいがあるのです。
それは高解像度のレンズがもたらすきれいさとはまた違ったものです。

T PROOF, RVP
少し続けましょう。
よく言われるように周辺減光はありますがビオゴンほど劇的(良くも悪くも)ではありません。またタイルを撮ったときに歪曲収差が少しでていましたが気にするほどではないでしょう。それよりもこうしたことでより上級のレンズと売り値19000円のコンパクトのレンズを比べている自分に気がついて唖然としたりもします。
またボケ味もなだらかな感じです。解像度をあげるとボケ味が落ちるともいわれますが、高価な硝材を使えないこのクラスでの選択がよい結果を生んでいるのでしょう。

まとめるとこの値段でこの写りというのは一見奇跡にも見えます。しかし技術に奇跡はありえません。
値段が安いから悪いでき -
なのではなく、値段が安いからシンプルにいく -
取捨選択して結果きれいに見せる、そうした光学技術者のセンスの良さがこうした佳品となって結実したのではないでしょうか。
神話はあっても奇跡はないのです。
テッサーレンズについて
テッサーという言葉自体は4という言葉から来ておりこれはこのレンズが4枚構成であることから来ています。ちなみにトリオターは3枚、5枚構成で有名なものはゾナーとへリアーでした。
テッサーが登場したのは今世紀初頭で「あなたのワシの目」というコピーとともにツアイスの一時代を作ったのです。
当時写真は白黒であったためコントラスト重視であり、周辺までシャープに写った。
いまではツアイスと言えばプラナーだが、ツアイスと言えばテッサーと言う時代があったのです。
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T PROOF, RVP
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