〈19〉貧しい者、悲しむ者の幸い
聖書
「心の貧しい人達は、幸いである、天国は彼らのものである。悲しんでいる者たちは、幸いである、彼らは慰められるであろう。」（マタイ５：３,４）。
心の貧しい者の幸い
★ルカ福音書には
「イエスは目をあげ、弟子達を見て言われた、『あなたがた貧しい人達は幸いだ。神の国はあなた方のものである』。」
とあります（ルカ６：２０）。
★「心の貧しさ」と「物質的貧しさ」との両方がこの世では幸いであると主イエスは言っておられます。
★「心の貧しさ」を世の人々は「浅ましさ、倫理道徳面での低劣さ」「心の卑しさ、軽蔑すべき心の状態」の意味で使っています。
★また、「物質的貧しさ」は「悪」であると断定し、クリスチャンは金持ちを目指すべきだ、と説く説教者もいます。
★しかし、主イエスはこの二種類の貧しさを共に「幸いなこと」だと言っておられます。
★ただし、この「幸いな者達についての教え」はまず第一に、弟子達に向かって言われた言葉であることが、ルカ６：２０に明確に示されています。すなわち、キリストの御名のために物質的、この世的に貧しくなった者、また、キリストに出会うことによって自らの心の内面的、霊的貧しさを知らされ、キリストを切実に求めるようになった者たちの幸いをこのみ言葉は語っています。
★キリストの福音を知らなかった人々が、自らの心の貧しさと、物質的貧しさを通して「真の豊かさ」を慕い求める求道者となり、キリストのもとに到達できるならその人は神の前に祝福された幸いな人々であるということが出来ます。
★聖書が言う「貧しさ」とは、自分の中に頼りになるものが何も無いことに気付いて、救い主を物乞いがその日その日の糧を切実に求めるが如く求める状態を意味します。「わたしを離れてはあなた方は何もできない」と言われる主イエスのみ言葉（ヨハネ１５：５）にうなずき、「はい、その通りです。あなたを離れては、私は何も善なる御心を実行出来ません」と告白する人を聖書は「心の貧しい人」と呼ぶのです。
★彼らが幸いなのは、天国はまさしく彼らのもの、彼らのために造られ用意されたものだからです。
悲しむ者の幸い
★新約聖書には主イエスが涙を流されたと言う記述はあります（ヨハネ１１：３５）が、主イエスが「笑った」と言う記述はありません。この世には、罪の無い人となられた神の御子が笑うことのお出来になる場所も時もなかったのです。
★「貧しい者」と共に「悲しむ者」をこの世は「あわれな人」「不幸な人」と見なし、決して「幸いな人」とは呼びません。この「悲しむ」と言う聖書のギリシャ語「ペンセオー」は強烈な悲しみを表す語であり、人の死を悲しむ時の「悲しみ」を表す語です。
★聖書は悲しみにも二種類あると言っています。一つはキリストなしに滅びに至る世の悲しみであり、もう一つはキリストを信じる信仰によって永遠の命に至る罪の悔い改めを与える聖霊による罪の悲しみです（Ⅱコリント７：１０）。
★ルカ１８：９～１７に出てくる「パリサイ人と取税人」の話の中の取税人の姿が、真に罪を悲しみ、心の貧しい人の姿を代表しています。
★この取税人は「エルサレムの神殿から遠く離れて立ち、目を天に向けようともしないで、胸を打ちながら、言いました、『神様、罪人の私をお赦し下さい』」（ルカ１８：１３）。
★この時、神の御前に義とされ、罪を赦されたのは、この取税人であって、自分の義しさを自慢したパリサイ人ではありませんでした。
★「悲しむ者は、慰められる」の「慰める」（パラクレオー）は神の最後の審判の時に弁護人としてそばに居て、弁護し、助けてくれるという意味です。身内の者の死の際に、お悔やみを言って慰めると言うような気休めの言葉を述べることではないのです。
★主イエスが聖霊を「慰め主」（パラクレートス）と呼んでおられるのは、聖霊が主イエスの十字架の血潮の故に、私たちを神の御前でサタンの非難から弁護してくださる弁護人としてのその御働きのためです。
★罪を悲しむ者の幸いは、十字架の血潮によって、罪を清め、私たちを信仰によって義とし、赦してくださるキリストを発見する時、真実となり、現実となるのです。
★自分の病気や身内の死などの不幸な出来事を通して、不幸の根源である罪からの救い主イエス・キリストを知ることが出来た人は、「私が苦しみ悲しみに出会ったことは幸いでした」（詩篇１１９：７１）、「この悲しみがなければ、私はキリストを知らず、永遠の命を持たずに死を迎えたことでしょう」と告白するのです。
★「あなたがた貧しい人達は、幸いだ。神の国はあなた方のものである。あなた方今泣いている人達は、幸いだ。笑うようになるからである。・・・しかし、あなた方富んでいる人達は、災いだ。慰めを受けてしまっているからである。あなた方今満腹している人達は、災いだ。飢えるようになるからである。あなた方今笑っている人達は、災いだ。悲しみ泣くようになるからである」 （ルカ６：２０～２５）。
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キリスト紀元２００６年 ５月 １０日公開
