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    話の泉

〈18〉裁判員制度と聖書

聖書
 外部の人たちを裁くことは、私のすべきことでしょうか。あなた方が裁くべき者は、内部の人たちではありませんか。外部の人たちは、神がお裁きになります。その悪い人をあなた方の中から除きなさい。  新約聖書Tコリント5:12,13(新改訳)

はじめに

 ★国会の議決を経て司法制度改革審議会の意見書に従い、来年2009年5月から裁判員制度が我が国に導入されることになります。本年8月に70歳になった筆者は、この裁判員に選任されることを辞退する資格をもっていますが、20歳から69歳までのすべての国民は裁判員法の定める特別な理由に該当しなければ、そしてくじに当たれば、選任を辞退できないことになっています。
 ★来春発効するこの新制度をよく知らない人の中には、「裁判所から頼まれたなら、面白そうだからやってもいい」と思っている人々もほんの少しはいるようです。
 ★しかし、この新制度は、その実態を知れば知るほど誰もが辞退したくなる、そのような代物です。そういう訳で、筆者としても国民の一人として他人事と言って済ませられないので、参考文献を図書館で借りたり、町の書店で購入したり、ネット上で調べたりして、当サイトに一文を載せることにしました。

T.裁判員制度の問題点
 ★このサイトの中の一文としては、その問題点のすべてを論じるスペースも必然性もないので、おもな問題点に絞って論じることにします。
 ★裁判員が本職の裁判官とチームを作って審議する事件は、有罪と判定されれば死刑になるような殺人や放火などの重大刑事事件に限定されています。
 ★たまたまクジで選任されると、自分の生活や仕事と直接的には関係のない、このような重大刑事事件の審議のために、自分の仕事を休まされ、場合によっては何か月以上も拘束されるということになります。
 ★雇用者は被雇用者をこの裁判員に選ばれた事による休職を理由に解雇出来ないことになっていると言っても、雇用者は巧妙にほかの理由を作って解雇することもありうるでしょう。
 ★また、裁判員を務めた国民はその審議の内容を家族にさえ漏らしてはならないと定められています。違反すると厳しい罰則が適用されます。国は国民の家族間に秘密を持ち込ませ家族の親密さ・情愛にひびをいれ、一体感を壊すことを何とも思っていません。

 ★他方、重大な刑事上の犯罪を犯したとされ告発された被告人は、にわか医者による手術を拒否する患者のように、「従来通り本職の裁判官だけで裁かれたいので、素人裁判員に裁かれるのを辞退したい」と言っても、それは認められないのです。
 ★しかも、被告人を含めたすべての国民が従来の職業裁判官による裁判を受ける権利を認めている憲法には、裁判員制度に関する規定・言及が全くないのです。すなわち、この新制度は憲法とは無関係のまま制定されています。

U.戦前日本の陪審員制度と今度の裁判員制度
 A.諸外国の国民参加裁判制度

 ★諸外国の国民参加裁判制度には陪審員制度と参審制度とがありますが、日本の今度の裁判員制度はそれらと似てはいても違った日本独特のものになります。

 B.戦前日本の陪審員制度と今度の裁判員制度
 ★戦前、日本が陪審員制度を実施していた時期
(1928〜1943の15年間)がありました。その天皇絶対の時代でさえ被告人は陪審員制を強制されず、職業裁判官だけによる裁判を選択する自由がありました。
 ★それはそれとして、注目すべきは、その時期が太平洋戦争直前から戦争初期に突入しつつある時代だったということです。
 ★今度の裁判員制度の趣旨は「国民の司法への参加」と言う点にあるようです。国家の主権者である国民が司法に直接参加することによって、国民のための司法を国民自らが実現し支えて行くためだとしています
(司法制度改革審議会意見書 そのT司法制度改革の基本理念 その1の3国民の役割)
 ★日本の裁判員制度が、司法の領域に国民を駆り出すことによって、国家のためなら自分を犠牲にすることを要求する国の姿勢を当然の事とし、戦争に向けて憲法が改定され、実戦部隊として自衛隊が米軍と共に戦地に派兵される時代への移行のための地ならしとならなければいいがと心配する識者もいます。
 ★アジア諸国がアメリカと距離を置き始めている時代に、日本政府は国富を事実上アメリカに搾取されながらも、米国従属政策を固持・推進し、アメリカの戦争行為に深く協力してアメリカと心中するに至る道をどこまでも貫きたいと思っているようです。

V.裁判員制度と聖書
A.キリスト者が上に立つ権威に逆らう時

 すべての人は上に立つ権威に従うべきである。なぜなら、神によらない権威はなく、おおよそ存在している権威は、すべて神によって立てられたものだからである。
 ローマ13:1

 大祭司が問うて言った、「あの名(イエス・キリストの御名)を使って教えてはならないと、厳しく命じておいたではないか。・・・」これに対して、ペテロを始め使徒たちは言った、「人間に従うよりは、神に従うべきである。・・・」使徒5:27〜33


 ★私たちキリスト者は普段は国家の権威に従います。憲法の下では国民が主権者ですが、国民から委託された権威を行使する国家の権威に通常は服従します。
 ★しかし、国家が聖書の教えに逆らうことを強制しようとするなら、キリスト者はこれを断固拒否します。

B.裁判員制度と聖書
 ★冒頭に掲げた聖句にある通り、教会外の人々を裁く仕事は神の仕事であり、現実は神がお立てになった警察・検察・裁判官がその任務を代行していることになります。
 ★教会とその中にいる教会員は、教会の中にいる悪い者を判定して、悪事が認定されたら教会外に追放する責任があります。教会の純潔を保持するためです。
 ★この裁判員制度は国民の中からその必要性についての議論
起こり、大多数の世論を背景に生まれて来たものでは決してありません。また現行憲法がこの制度について何ら言及せず、その出現を待望するような言葉もないのに、上からの一方的命令によって「さあ、この制度に従え、逆らう者は処罰する」と迫られるなら、聖書の神に絶対服従する私たちキリスト者は「聖書の神の御名によって、国家の命令といえども拒否します」と言わざるを得ません。

W.この制度を望まない人々の新制度への対処法
 A.この制度を望まない一般国民の対処法

 ★警察は誤認逮捕や、自白強制や、違法捜査によって無実の人を犯罪人に仕立て上げる間違いを犯すことがあります。
 ★警察の調書に従って事件を把握している検察官の意見を参考にしながら、裁判員が被疑者を裁くということは、警察が間違っていた場合、警察の過ちを結果的に是認し、それに加担することになります。
 ★「私は警察の調書が絶対間違いないとは思わないので、その調書に従った評議や裁定を下すことは断じて辞退します」と裁判所に申し立てれば、必要に応じて有罪判決を下さなければならない裁判所としては、このような裁判員は極めて厄介な、邪魔な存在となるので除外される可能性はある、とある弁護士は書いています。

 B.キリスト者の新制度への対処法
 ★キリスト者の中でも、経済的かつ時間的に余裕がある人で、刑事事件裁判に深い関心をもち、国民が国家の司法制度に何らかの貢献ができると本気で考えている人がいるなら、その人が裁判員制度に積極的に協力することは本人の自由です。
 ★しかし、一般のキリスト者は金銭的にも時間的にもそんな余裕はなく、国家権力によって裁判員に任命されたなら、重大な被害を自分と家族に招来させることは火を見るより明らかです。そのような人々に、弁護士の西野喜一氏が提案している方法は有効であろうかと思います。
 ★それは「『信仰上の理由から
(当サイト筆者の加筆)』私は人を裁くことは出来ません。また、裁判員に任命されても、裁判の評議の場において自分の意見を表明することは断固いたしません。」という意思表明を裁判所からの出頭命令が届いた後に、返信して置くことです。西野氏の見解では、憲法下でのこの意思表明は不当な法律違反には当たらないとのことです。裁判員制度の円滑な実施を志向する裁判所としてはこのような人物を裁判員に任命する訳に行かないので、除外されるであろうと西野喜一氏は書いています(下記「裁判員制度の正体」208ページ)

結び
 ★私たちキリスト者は、聖書のみ言葉に従って、国家の死刑制度そのものは、悪のこの世が続く限り、キリスト再臨の日までなくてはならないと思います。
 ★しかし、三権分立の原則に従って機能して来た裁判所の仕事への参加を素人の国民に無理強いすることには強い反発を覚えます。
 ★2009年 5月から日本のキリスト者は国家権力との戦いの時代に入ることになります。私たちキリスト者は信仰の良心の自由を束縛する「稀代
(きだい=世にもまれな)の悪法」とも言われる裁判員法に対して断固反対の姿勢を貫き、神と人の前に神の言葉・聖書への服従を証して行きたいと思います。



◆裁判員法条文と参考文献とサイト

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(いわゆる裁判員法)

ガイドブック裁判員制度 
法学書院 2007年 4月 5日発行
 著者 河津博史 他3人(全員弁護士)著
 

裁判員制度の正体
 講談社現代新書 2007年7月発行
 著者 西野喜一 
  著者紹介 新潟大学大学院実務法学研究科教授・元新 潟地方裁判所判事

裁判員制度はいらない 講談社 2006年 9月発行
 著者 高山俊吉
  著者紹介 東京弁護士会所属弁護士

国民の8割がいやだと言っている制度はやめさせるべきだ―西野喜一さん〈阿修羅〉




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キリスト紀元2008年 10月 1日公開

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