今日は遅く起きた。9:30 ごろ、この辺を観光しに昨日のベチャで出かけた。はじめにバティックファクトリー SENO へ。バティックを制作している作業を真近で見ることができる場所だ。面白かったが、ただバティックはおととい買った物の方が色やデザイン的に優れている気がした。しかしこの店でも買ってしまったんだな、これが。適正価格がどれぐらいなのかは全然わからない。私が US$ とルピアを混ぜて払ったうち、いくらかが店員の懐に入った。相手をした店員はしきりにルピアを持ってないか聞いていたが、それは自分がいくらか取るためだったのだろう。
その後、パペット工房に行った。木のあやつり人形や、皮で作られた影絵用の人形などがたくさん並んでいた。そこの兄ちゃんはとてもいい感じの人で、しつこく商売を持ちかけてこない。
「お土産?」
と2回聞かれただけだ。全然買わなくてもいやな顔ひとつせずに、作業や完成品の人形を自由に見せてくれた。こうでなくっちゃ。
それからちらっと別の店に寄った後、王宮へ。まあ、どこの宮殿でもそうだが、昔の絵画や服、食器などが展示してあった。入口ではチケットを買って入るようなところなのに、なぜか南の方の門へ行くと現地の人が自由に出入りできるようになっていた。そしてそこで、アジアの旅ではおなじみの「勝手にガイド」に会ってしまった。
Holland のオレンジのサッカーシャツを来ている"奴"は、親切にプリンスキャッスル(?)へ連れて行ってくれた。私は最初、王宮の敷地内だと思っていたので怪しまずにそのまま付いて行った。だが観光客が誰もいない。その辺りで、これは「勝手にガイド」だなと気づいた。その後、さんざんバティックサロンへ誘われた。いい、と言ってもしばらくするとまた別の店へ誘う。しつこいので、私は建物だけ見たいんだと言って、無視して歩き出した。だんだん気分が悪くなってきた。
ベチャドライバーが王宮入口で待っているので、無視して王宮へ戻ろうとすると、奴は 10,000 ルピアくれと言う。これが奴の JOB だと言っている。そうら来た。誰がそんなに払うもんか。いやだと言うと、俺には brother がいて、もし払わないとあなたはどうたらこうたら・・・。はいはい・・・。一応、穴場らしいプリンス用の建物には連れて行ってもらったので 5,000 ルピア札を出してみたが、"奴"は 10,000 と言って譲らない。なら払わんぞと 5,000 は引っ込めて、王宮へ入った。
その王宮の南の出口で座って見ていた男の人が、払わなくても OK、我々はフレンドだと言った。私はその男の人に
「こいつは 10,000 払えって言ってるんだよ。」
と言ったら、その人は「それはいかん」という風に首を振った。Holland シャツの"奴"はこっちを怒った目で見ていたが、私は無視してそこを離れた。一気にいやな気分になってしまった。王宮なのに、なんでこんな奴がいるんだよ。あのゲート、閉じとくか見張りを付けとけ! とても腹が立った。
その後入口へ戻り、待っていたベチャで水の宮殿へ。水の宮殿の入口では、ベチャの彼が引き下がってしまうガイドの男がいた。ガイドの方が立場が強いのかな。ガイドは私の乗ったベチャを止め、ベチャの彼にお前はこれ以上来るなというようなことを言って、降りた私に付いて来た。なんか態度が高圧的だ。チケットを買って入った後も付いて来ようとするので、ガイドはいらんと言うと、彼はオフィシャルだと言う。でも金取るんでしょと聞いたら、オフィシャルだから取ると言う。なんか感じ悪いな。オフィシャルとかオフィシャルじゃないとか関係ない、入場料以外には払わんよ、と言ったら去ってくれた。
中へ入ると、後ろから声をかけてくる奴がいる。またかよ、ガイドはいらんって言ったのにと思って無視していたら、横に来たのはベチャの彼だった。なんだ、ほっとした。それから彼が中を案内してくれた。私がガイドを断ったのを見てから来たらしい。金を取るオフィシャルのガイドを差し置いて観光客を案内してはいけないのかな。
中では子供たちが遊んでいたり、バティック屋の店先でロウで布に線を描いている女の人がいたりして、とても和やかな雰囲気だ。ほほえましくて良かった。しかしジョグジャはどこへ行ってもバティック屋ばかりだな。ベチャの彼が、スルタンのピクチャーがかかっている店が中にあるから見に行こうというので、案内してもらった。スルタンの顔を見せてもらったついでにその店のバティックを見ると、今日、王宮に行く前に SENO で買ったのより買いたくなる色のバティックがあった。でも金がないからもう買わない。うーん、惜しいなあ。なんでさっき買っちゃったんだろう。店のおやじはいい人だった。
水の宮殿を出てからはソスロへ戻った。ベチャの彼には最後にレストランに連れて行ってもらい、その前で今日の料金を払って別れた。ベチャの料金は最初の約束どおりだ。いい人だー。レストランでは
宿へ帰り紅茶を飲んでのんびりしていると、宿の彼が来たのでいろいろ話をした。何を見て、何が面白かったかを話しているうちに、シルクのバティックを見たことないのかと聞かれた。ないなら歩いて15分ぐらいのところにあるから後で見に行こうという。シルクの作品を作るアーティストは5人しかいないそうだ。ここで見逃すと、他では見られないらしい。ん? でも SENO でシルクのやつなかったかな。その後、宿の屋上へ上がって、彼にインドネシア語をいろいろと教えてもらったりした。彼は日本語の教科書を持っていて、いくつかの日本語の単語も知っていた。
彼はこの辺のガバメントのアマチュアチームのサッカープレーヤーだったそうだ。ここでの"ガバメント"というのが日本語でどういう意味なのか良くわからなかったが、オリンピックに出るようなナショナルチームということではないらしい。州とか市のレベルの公式チームってことかな。そう言えば、彼と並んで歩いているとみんな彼に声をかけてきた。みんな彼を知っていて、町の人気者らしい。彼はいかにもスポーツマンという風貌だ。足も速そう。
15:30 ごろ、モスリムの彼はシャワー&お祈りへ。その後、2人でバティックの店へ出かけた。歩きながら彼と、寒い日本の冬などの季節の話をした。インドネシアが寒かったら、死んでしまうと言っていた。夏はインドネシアみたいに暑いが、冬はスキーもできるという日本の気候は面白いらしい。それから、インドネシアに来てから、道にやたらと牛のマークの赤い旗が出てるのと、黒と赤に塗られたヤグラがあったりするのをよく見かけるので
「あの旗は何?」
と彼に聞いてみた。あれは選挙のキャンペーンで、最も支持されているスカルノの娘メガワティの政党のものだそうだ。最も有力な政党で、彼らがおそらく勝つだろうというようなことを少し小声で教えてくれた。彼の様子から、この話題はあまり表で大っぴらに話すことではないということが感じられた。
また、スポーツの話などもしたが、私はサッカーをやらないのでその話題ではちょっと盛り上がれなかった。広場では子供たちがサッカーをしていた。サッカーってどこでも人気あるんだなあ。
店に着くと、かわいい女性がいた。握手して名前を聞いたが忘れた。どうも私は人の名前を聞いてすぐ忘れる。覚える気がないのかもしれない。それに、覚えにくいというのもある。多分、名前が漢字じゃないから字づらでイメージして覚えることができないんだろう。漢字文化の人間の記憶のしくみだねえ。
シルクに描かれたラーマーヤナは素晴らしかった。全体に青い色で描かれていて、その青がとてもいい色だ。今まで見たものと絵の雰囲気が違っている。これまでにたくさん買ってしまったが、全部いらない。この店のこれだけでいいと思うほどだった。特に今日行ったファクトリーで買ったやつはもういらん。彼女は作り方や、シルクでも洗って大丈夫なことを教えてくれた。「洗う・洗濯」という日本語も知っていた。
「そう、センタク!」
と私が言うと笑った。わー、かわいいー。彼女はラーマーヤナの説明もしてくれた。宿の彼はモスリムなのでラーマーヤナは詳しくないから、ラーマーヤナのことは彼女に聞いてと言われた。ここでは宗教の違いが歴史の中に溶け込んでいる。宗教の違いを超えてみんな仲良く暮らしているというのが感じられた。そういう日常があるというのが、なんだか嬉しい。イスラム教、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教、世界の代表的な宗教が集まっていながら普通に仲良くできている。よくニュースで聞く宗教間の対立はここではないのだろうか。なんだ、仲良くできるんじゃん、という感じだ。モスリムの人がヒンドゥーのおみやげを勧めるというのも面白い。
それから何枚かを吟味して2枚選んだ。やっぱり伝統的なワヤンのデザインがいいね。抽象的なのはあんまり好きじゃない。大きいやつはとてもいいんだけど、持って帰ってから困りそうなんでやめといた。値段表を見せてもらってびっくり。安い! シルクだろ、何でだ? ははーん、そうか、今まで他の店で買ったのはボられたということか。ちくしょう。
2枚買ったので、綿の小さい作品(Student's Work)の中からおまけを1枚選んでいいと言われた。おまけの一品は、ボロブドゥールの描かれたほのぼのとした絵柄のものをもらうことにした。
店の壁には日本人が作ったという非売品の一枚が飾ってあった。日本の伝統的な遊び、縄飛びやかくれんぼなどが描かれていて面白かった。うーん、もうちょっと彼女と話をしたかったぞ。店を出るとき、オーストラリア人がやたらと(8枚も)バティックを買っていた。
帰り道、彼は私と同じ27才(彼は8月生まれ)だということがわかった。彼は私を年下だと思っていたらしい。旅行会社で働いてたのだが、今は JOB がないそうだ。給料の話もした。紙だけが送られてきて、お金は得られなかったとか。いくら今日本の経済状態が悪いとか日本の物価は恐ろしく高いと言っても、私はちゃんと会社に雇われていて、給料を貰っている。旅行もできる。彼の前では、日本は今経済状態が悪いんだなどとしつこくは言えなかった。
それにしても旅行会社で働いてたのか。ははあ、どうりで旅行者が必要な情報に詳しい訳だ。手続きもいろいろ手伝ってくれるし。1999年になって国の経済がよくなれば JOB を得られると言っていた。そして結婚の予定があるそうだ。子供は2人欲しいと言っていた。私は彼女がいないと言うと、どうしてだと聞かれた。どうしてって言われてもなあ。彼女がいないってのは不自然に思われるらしい。
宿に帰ってからはまた屋上に上がり、彼と話した。日本の話。今私が住んでいる福岡。彼は FUKUOKA というのは初めて聞くらしい。やはり外国ではあまり有名じゃないんだろうな。
「小さい町?」
「いや、日本の西の Kyushu エリアでは一番大きい都市なんだ。」
Kyushu というのも知らないようだ。うーん、それ以上には説明できん。
「東京からは飛行機で1、2時間ぐらいのところにあるんだ。鉄道だと5時間ぐらいかな。」
私が東京へは今、鉄道より飛行機の方が安くて変だという話をすると、彼はいかにも不思議そうに、
「日本の鉄道は遅くて振動がすごくてサービスが悪いのか?」
と言った。いやいや、世界でもトップレベルの速度と快適さを誇る鉄道なんだけどね。やっぱり飛行機の方が安いってのは変だと思うだろうな。私も変だと思う。
「最近、航空会社がチケットを安くしようと努力したんだよ。」
と答えたが、何か説得力がないよな。
それから腕の傷を見せながら、怪我をした話、入院した話などを聞いた。サッカーボールのマークのついた彼の名刺をもらった。彼は Kusdiantoro。よかった、名前なんだっけと今さら聞けなかったから。私も彼に自分の名刺をあげた。私が雇われてるのは社員4,000人ぐらいの会社だと言うとちょっと驚いていた。日本ではそんなに大きい方じゃないんだけど。
話の中で、私はデンパサールから日本に帰るのかということを聞かれた。
「いや、日本への便はジャカルタ発だから、デンパサールからジャカルタまで飛行機で飛ばないといけないんだ。」
「チケットは持ってんの?」
「バリで買おうと思ってるんだけど。」
「なんだ、もっと早く言えば今日、ガルーダのオフィスへ行って買えたのに。」
その時、もう 17:00 を過ぎていた。
彼の知り合いの旅行社がまだ開いていて、そこでチケットが取れるから行ってみようと言う。彼と一緒に外へ出た。いつもの小屋とは違う旅行社では楽しい兄ちゃんがいた。とても熱心にあちこちに電話してくれたが結局チケットは取れなかった。1日も2日も3日もだめ。全てFULLだ。やはりクリスマスと正月はジャワからバリにみんなバカンスに行って、ちょうど私が席を確保したい1月3日ごろに帰ってくるらしい。仕方ない、バスか・・・。バリからだとジョグジャ乗り継ぎでジャカルタまで2日かかる。バリでは1泊しかできないことになってしまった。
宿の屋上へ戻ってから彼と今後の時間と予定の整理をした。バスのチケットはここで両方取ることができるのか聞いてみた。ここからジャカルタまでのは取れるが、デンパサールからジョグジャまではどうかわからないという。それなら聞きに行こうということになり、再び外へ。忙しいな。
今度はまた別のところに連れて行かれた。そこで、デンパサールからジョグジャまでのバスのチケットはここでは取れないから、クタで泊まるホテルで頼めばよいということになった。ここ(ジョグジャ)からジャカルタへのチケットはいつもの小屋のオフィスで取った。しかし、ここって来る度に接客する人が違うな。小さいのにスタッフは何人いるんだろう。
部屋へ戻った。しばらく部屋で寝転んでいると、廊下から
「トモ!」
と呼ばれた。彼が、バリからのチケットが買えるから一緒に来いと言う。あの後もいろいろ当たってくれていたのだ。なんていい人なんだろう。並のサービスの良さではない。彼は真のエージェントだと思う。しかもこれは彼の仕事ではなく、極めて個人的な親切心からやってくれているのだ。「勝手にガイド」に彼の爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいだ。
行ったのはまた別のところだった。そこでバスのチケットを買った。いやー、よかったよかった。今後どうすれば良いか、彼は細かく丁寧に教えてくれた。どこでどう乗ればよいか、何に気をつけるべきかなど。もうただ感謝感激である。
彼が町の人気者だというのは、一緒にいて良くわかる。こうやって私のチケットのために駆けずりまわっているときも、いろんな人と挨拶する。みんな彼がサッカーをしていた事、怪我のことまで知っているらしい。それにしても今、イタリアのペルージャにいる中田は有名だ。私を日本人と見てとると、道端から
「ナカター!」
と声がかかる。そして中田の話になると、奴はすごい、カズより優れている、とみんな興奮気味に言う。
いやー、今日は夕方から随分と駆けずりまわった。あ、夕飯食ってないや。まあいいか。もう寝よ。ヤモリが天井にいる。手をパンと叩いたら落ちた。音で動揺してやんの。変なの。