ティラノザウルスを見て情報社会を考えた
東京での会議に出席したついでに、「林原自然科学博物館ダイノソアファクトリー」に立ち寄ってみた。岡山駅南(駅の地下街から続く、あの必要以上にりっぱな地下通路の先)にできると聞いている自然科学博物館へ向けて、現時点で展示できるものを整理してオープンしたといった感じだろうか。別に宣伝をするつもりはないが、飛行機で東京に飛ぶ人は、天王洲アイルでりんかい線に乗り換えればすぐの国際展示場駅前だから、一度体験されてはいかがか。
展示されているのはゴビ砂漠で林原が発掘した恐竜の化石を中心に、発掘現場や研究デスクの再現、各地で発掘された恐竜の化石類などだ。
それだけなら他にもあるではないかと言われるだろうが、ここの特色はユビキタスネットワーク(いつでも、どこからでも、欲しい情報を自由自在に取り出せる)の世界が疑似体験できることのようだ。入場者は携帯情報端末(PDA)を首にかけてもらい、左耳にヘッドセットをして、展示場に進むことになる。各展示場は四つのエリアに分かれていて、それぞれに腰ほどの高さの照明塔のような柱が立っている。そこにPDAを近づけると情報がブルートゥースでやり取りされ、PDA上に表示される番号を選ぶと、そのエリアの担当者の説明を聞くことができるのだ。
それだけではない。2箇所の撮影スポットがあり、そこでPDAのボタンを押すと写真を撮ってくれる。そのデータは最後のコーナーで100円を払うとカラープリンターで出力してくれる。
そして、ここからがミソなのだが、自宅に帰ってからも再度展示内容が見えるように、一人ひとりの見学結果をもとにした個人専用「マイページ」がHP上に用意されるのだ。帰りがけにIDとパスワードが打ち出された紙が出力されるので、それを自宅から入力してやればマイページが見えるというもの。
ははあ、なるほど。これがデジタルミュージアムのひとつのイメージかと納得した。実物もある。それを情報端末やインターネットを使って学んだり、活用したりできる。ちなみにHPのアドレスはは、http://www.dinosaurfactory.jpだ。
なるほど、おもしろい工夫ではある。しかし、800円払って何度も行く人は少ないとも思える。まして、自宅からパソコンでかなりのものが見えるとなればなおさらだ。情報化が、博物館の経営に影を落とすこともあるかも知れない。
インターネットを介して自宅や職場からいろいろな情報にアクセスできる。便利になったものだ。しかし、パソコンで情報を見てわかったつもりになるが、実際にそばでブラキオサウルスの化石を見るとその大きさに驚き、圧倒される。その体験は大切だ。今だからこそ、実際にそこに行かなければ体験できない魅力を、まちも、そこにある施設も、持つことが大切だと思えたのだ。
(2002.10.18)
