許せないテロ、香田さんの殺害  日本人を危険にさらしている原因を忘れまい
 バグダッド市内で香田証生さんが遺体で見つかった。何の罪もない一般市民を犠牲にすることは卑劣極まりないテロ行為であり、断じて許せない。

 イスラム過激派ザルカウィが率いる組織が犯人だと言われている。自衛隊を撤退させなければ香田さんを殺害すると公表していたが、政府は要求に応じない方針を打ち出していた。

 私たちはここで立ち止まって冷静に考える必要があるのではないか。というのも、筆者自身もイラクに入った香田さんに対して、あんなところに興味本位で出かける方が悪い、と感じてしまっていたからだ。かなりの日本人がそう感じていたのではないか。ある大手プロバイダーの投票サイトのデータでは、小泉首相の自衛隊撤退拒否に賛成の人が65.5%をしめ、反対は25.5%だった。
 改めて考えよう。なぜ香田さんは殺されなければならなかったのか。それは、彼が自衛隊という軍隊をイラクに派遣している日本の国民だったからだ。彼の行動は褒められないが、死で償わなければならないほどの罪を犯したわけではない。
 自衛隊をイラクに派遣するとき、国民の7割は反対していたことを忘れてはいけない。今年の63万市民のつどいの記念講演で暉峻淑子さんが語ったように「NGOだったら自衛隊の100分の1のお金で、あれだけの水の浄水ができる。あれは自衛隊をただ出したいということのために人道支援という名前をつけただけの話なんだ」というのは間違いない。
 彼の死に責任があるのは、一義的には殺人者たちだ。しかし、たかが給水活動のために自衛隊を撤退させず、アメリカの戦略支持の態度表明に固執する日本の政府が、自国民を危機にさらしていることも間違いない。その意味で政府も責任があるはずだ。
 政府はテロとの戦いを継続するという。アメリカの戦略がテロを拡大していることは明らかだ。だからテロと闘わねばならなくなった。今必要なのは、テロ根絶の道を探ることではないのか。
 「政府の行為によって 再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意した(憲法前文)」はずの私たちは、政府の行為が真に国民の安全を守り、平和を実現する道にあるのかを問い続け、もし政府が過ちを犯しているなら、それを改めさせねばなるまい。

                                                                                            (2004.11.4)