「モーターサイクル・ダイアリーズ」を観て「国際社会において名誉ある地位」とは何かを考えた

 モーターサイクル・ダイアリーズという映画を観た。23歳の医学生の主人公とその相棒がおんぼろバイク(途中で壊れるのだが)で南米大陸を探検しようと1万キロあまりを旅するロードムービーだ。

 アルゼンチンを出発し、アンデスを越え、チリからアマゾン上流、最後にベネズエラに至る長い旅の各地の美しい映像。若い二人の青春の輝き。その思想のために仕事を奪われ鉱山に働き口を求めて旅する夫婦との出会いや、ハンセン病の隔離施設でボランティアとして働く中での目覚め、そして「ラテンアメリカは混血が進んだひとつの民族でできている、ひとつなんだ(ニュアンスだけど)」という主人公の言葉が胸に残った。その主人公の名はエルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。親しみをこめて「チェ・ゲバラ」と呼ばれる彼である。

 その彼が旅したラテンアメリカで、12か国の大統領らが集まって首脳会議が開かれ、「南米共同体」の設立を宣言したという報道を読んだ。EUの南米版をめざすものなのだろう。映画の記憶のせいか、誇りあるその決意に思わず目頭が熱くなった。

 東南アジア諸国連合(アセアン)でも東アジア共同体を目指すことが決められている。南米の動きといい、東アジアといい、国と国が対等に、そして共同して経済も社会も作っていこうという、本当の意味の国際社会作りの努力は着実に進んでいる。

 小泉首相はイラクの自衛隊の派遣を1年延長することを決めて、その理由に、あろうことか憲法前文を引き合いに出して「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」という趣旨に合致することをあげた。

 「国際社会」というものは数だけで決まらないとはいえ、イラクへ派兵している国は決して多数派ではない。先進国の中でもフランスやドイツは決して派兵しようとはしない。日本がイラクに自衛隊をとどめることが「国際社会への貢献」というのは、いかにも無理があるというものだ。本当の理由は、「アメリカ」の占領政策への支持の表明でしかないと考える人は多い。イラクの人々もそう思っているに違いないのだ。

 今、もう一度考えたい。「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと務めている 国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」ことは、アメリカに付き従うことで達成されるのかどうかを。 
                                         (04.12.10)