三菱ふそうのバスから安全について考えた
 公民館に勤めていると、いろいろおもしろい話題が耳に入る。最近聞いた中で考えさせられたものの一つに三菱ふそうのバスの話題がある。

 公民館では高齢者の方を対象にした主催講座の中の一回として、バスを使った視察見学を行うことも多い。その参加者からの問い合わせで、「バスはどこの会社のものか」というのがあったというのだ。どのバス会社なのかを聞いているのではない。「三菱のバスじゃないだろうな」という問い合わせなのだった。バス会社への問い合わせの結果は、見事にふそうのバスなのだったそうだが、県内のバスの多くはふそう製なのだそうで、それを避けて乗ることはできないようだ。

 その話を聞いたときは、半分冗談のように感じたのだが、今ではそうも言っていられなくなった。なにしろ、9日には国土交通省がクラッチ系の欠陥を持つと考えられ、緊急点検中のバスやトラックについて、直ちに使用を中止して点検を受けさせるよう指示したのだ。言い換えれば、点検しなければ使用してはいけないという意味で、事実上使用禁止の指示ではないか。

 今街中を走っているバスやトラックは、その指示を受けて点検を済ませているものと信じたいが、はたしてそうなのか不安も残る。これを書いている10日現在では、指示が出されてまだ時間があまりたっていない。バスを止めて点検する時間があったのだろうか。観光バスはどうか、路線バスはどうかと、心配になってくる。

 それにしても、三菱やふそうのリコール隠しはひどいものだった。バスやトラックに致命的な欠陥があれば、利用者はもちろん、街行く人々の命を危険にさらす。実際に死亡事故も起きていた。利用者や市民の安全より会社の安全(そう思っていた)を優先したといわれても仕方ない。その結果は今や誰もが知っているとおり。三菱自動車は経営危機といって良い状態だ。岡崎工場は閉鎖。水島工場に一本化すると発表されたが、水島も大丈夫なのかとの心配の声は多い。

 三菱グループの中には、三菱は自動車なんか作らなくていい、戦車を作っておればいいんだという声があったという報道を読んだ覚えがある。三菱という企業の体質とは思いたくないが、人を殺すための戦車づくりで儲ければ良いとの発想が、人命や安全軽視につながるのではないかとかんぐりたくもなる。

 昨今、自治体リストラが進められ、民間礼賛とも感じられるほど民営化万歳論がはびこっている。民間ならばそれでベターなどといえないことは、三菱が証明してくれている。身の安全や目先の利益より、市民の安全や利益を考えることこそ、企業にも自治体にも求められているに違いないと痛感させられる。         

                               (2004.7.10)