ミサイルで守れるものはいったい何か?
防衛庁が来年度予算の概算要求に、ミサイル防衛システムの導入(1341億円)やヘリ空母(防衛庁用語では「ヘリコプター搭載型護衛艦」と呼ぶそうだ)の建造(1164億円)を盛り込んだ。「憲法改正だ」という声が高まり、アメリカの戦略に乗り、何が何でもイラクへ自衛隊を送るという姿勢の政権だけに、これは「きな臭い」どころではない。
なにしろヘリ空母なんてものは、もともと対潜攻撃ヘリを積んでシーレーンを守るものか、もしかしたらイラク戦争で使ったような攻撃ヘリを積み、米軍につき従って、どこまでもでかけていくつもりのものかしか考えられない。そう考えながら他の要求内容を見ていたら、しっかりと戦闘ヘリ2機(144億円)も要求してあるではないか。おまけに爆弾用精密誘導装置(12億円)も要求してある。ますます米軍のお先棒担ぎのための予算ではないかと疑いたくなる。
いまや世界では、あちこちで爆弾テロが起こってはいるが、潜水艦も出てこないし、弾道ミサイルも出てこない。北朝鮮のミサイルという脅威があるといわれるかもしれないが、考えてもみよ。ミサイル防衛システムはアメリカが開発を進めているものの、2015年が完成目途だ。まだ実験段階でもないといわれているしろもの。ミサイルが弾頭に分かれたあとの迎撃は、ほぼ100%無理と言われている。
今回配備が計画されている地上配備型の「パトリオット3」は大都市圏や米軍基地所在地を中心に配備される想定で、地方都市への攻撃にはこれを移動させて対応するのだそうだ。そもそも日本へのミサイル攻撃は想定しがたいし、攻撃されないように外交で抑えるべきものだとは思うが、万が一攻撃されるとすれば、その想定には岡山は入っていないわけだ。
テロ全盛の時代に、相手が正直に大都市と米軍基地を狙ってくれる保障などない。むしろ停電や放射能被害の広がりを考えれば、数ある原子力発電所こそがミサイルの目標にされると考えるのが自然だろう。これなら核兵器をもっていなくても十分な脅威になりうる。北朝鮮から狙いやすい日本海側にずらりと原発を並べておいて、これでミサイル防衛に本気だとは恥ずかしくて言えまい。
こう考えてくると、ミサイルで日本も国民も守れはしないことがはっきりする。では現政権は、ミサイルでいったい何を守ろうというのだろうか。この巨額の予算を、雇用を増やし、景気を改善するためにこそ使って欲しいと願うのは、私だけではないと思うが、どうだろうか。
(2003.8.30)
