大企業のレーゾンデートルと地方自治について考えた
お隣の片山鳥取県知事の9日の発言が物議をかもしている。
東芝の西室会長が議長を勤める「地方分権改革推進会議」が6月6日に提出した「三身一体の改革についての意見」が、国から地方自治体への補助金や地方交付税の縮小・廃止を盛り込みながら、税源委譲は実質先送りする内容であったことを受けて、これに怒った?片山知事が、県として取引の見直しも含めた東芝への対抗手段を検討していると表明したのだ。
知事は「西室議長の議事運営は非民主的なもので、地方の財源を拉致しようとしているとしか言いようがない。地方全体が敵意の対象にされた」と、「拉致」などという物騒なたとえまで持ち出した。口でいくら批判してもだめだから、その企業との付き合い方を考えないといけないというのだから、その怒り方は半端ではない。
財界から、こんなことを言われたら企業から政府の審議会の委員に出る人がいなくなるという声も出ているようだが、好きなことを言ったり、したりしても何の責任も取らないよ、というのはいかがなものか。
そもそも、この地方分権改革推進会議の議論の中でも反対意見が出され、委員間の合意もできていない。神野直彦東大教授なども委員として反対の記者会見まで開いたという、いわく付の「意見」ではあった。
確かに補助金は一方的に縮小・廃止、地方交付税も縮小し、財源を地方に譲らないまま進んでいけば、地方自治体の財政破綻は必然だ。片山知事ならずとも、そんな勝手な話があるものかと怒りたくもなる。
それにしても東芝の会長はずいぶん国の肩を持ち、地方には冷たいではないか。財界全てがそうだとは思いたくないが、国には色々と世話になっているからいい顔をするが、地方自治体は儲け先ではあっても補助金をもらっているわけでもないからね、というのでは地方は浮かばれない。片山知事の肩を持ちたくなるではないか。
大企業が地方に工場を建てるなどして進出する際に、自治体は優遇措置などでずいぶん手厚くもてなしてきたはずだ。ところが昨今のグローバル化で、企業は生産拠点を中国に移し、国内産業の空洞化が続いている。今でさえ財源不足に苦しむ自治体財政をさらに空洞化させるのでは、いったい大企業はどう社会的責任を果たすのか、と問いたくもなる。
かつて企業のレーゾンデートルを熱く語った、HATSUSHIBAの島耕作取締役に、今回の騒動について感想を聞いてみたい(笑)ものだ。
(03.6.10)
