たかが金、されど金。忘れまいぞ。
90%を越える小泉人気。田中外相も財産家のわりに庶民の代表、塩じいこと塩川財務相もなんだかいい人という扱われ方で、肝心なことが忘れられそうな、いやーな感じがするのは私だけだろうか。
その筆頭は機密費問題だ。外交機密費と官房機密費が疑惑の対象で、特に官房機密費の使い道について官房長官時代に塩川さんがマスコミで発言したこともある。人気の三人にとって、この機密費問題の扱いは踏絵とも試金石とも言えそうだ。
私の記憶が正しければ、塩川さんは、外務省が外交機密費の一部を首相官邸に上納していた、官房長官時代に官房機密費を野党対策に使ったと、テレビで発言したはず。ところが国会で追求されると、急にぼけ爺さんになってしまい、覚えていないと言い出し、ついには錯覚だったと開き直ってしまった。田中外相も、事務方がないと言っているから上納はないと言い出した。
おいおい、そりゃないだろう、というのが多くの国民の声ではないだろうか。官房機密費が野党に対する「国会対策」や国会議員の外国訪問の際の「せんべつ」に使われていたという塩じいの発言は、本人が否定すればするほど真実だったと国民に告げているようなもの。日本共産党以外の野党が国会でこの問題を追及しないのは、その金を受け取っていたからだろうと、マスコミも批判している。
プラダのバッグと同じで、小泉首相人気はみんながいいというからいいというもの。「小泉ブランドなら安心」という思考停止状態がある、という説を新聞で読んだ。その小泉ブランド人気に乗じて、「構造改革」を具体化する改革案が相次いで打ち出されている。
地方交付税や道路特定財源の見直しなどもそのひとつだ。公共事業の負担割合の見直しを含めた地方への補助率の切り下げもある。全貌が良くわからないが、国家財政が厳しさから、とにかく金を払わない戦略に違いない。その戦術として地方交付税削減のために、基準財政需要額積算の見直しなんてことも言い出したのだろう。
今進められようとしている「改革」は国民に痛みを押し付けるものだ。本当に必要なら、痛みも甘受しなければならないが、今の事態を見ていると、どうも怪しい。自分たちの機密費疑惑にはふたをしておいて、国民や地方自治体に借金の肩代わりを押し付けるのは、厚かましいにもほどがあると言うべきだ。
地方自治体なら、住民代理訴訟で損害賠償を求められてもおかしくない。現に岡山市では訴訟が提起されている。国にはそういう制度がないものだから、国家の金の使い方がおかしくても、官僚や国家議員が賠償を求められることはない。
参議院選挙も近いことだ。この際、この疑惑の解明と、そのことへの小泉内閣や野党各党の対応は、しっかり記憶にとどめておきたい。ゆめゆめ忘れまいぞ、おのおの方。
(2001.6.3)
