黄色いハンカチを嫌いになりたくはない
イラクヘ派遣された旭川市の陸上自衛隊第二師団の隊員たち。本来、日本とその国民を守るためにその任務に就いたはずの人たちだ。おそらく本音では行きたくなかったに違いない。しかし、その声を出せない組織が自衛隊なのだ。
大量破壊兵器の存在も否定され、根拠もないアメリカの無法な攻撃で破壊されたイラクの復興を名目とした派兵。アメリカへの協力のポーズを示すためだ。自衛隊の中から犠牲者が出ることを政府は予定していて、それを憲法改正の地ならしに使おうとすら考えているのではないかと疑う。
その時、小泉首相はイラクに飛んで行き、日の丸で棺を覆って日本に連れ帰る。日本の代表としてイラク復興のために尊い犠牲となった隊員。その死に報いるためにも憲法を改正しなければならない。 こうはっきり言ってくれれば、逆に国民の反発も生まれて憲法改悪の道はかえって険しくなるかもしれない。
しかし、首相が黙っていても、マスコミの報道とそれに誘導される世論は、おのずと自衛隊と犠牲になった隊員に同情的にならないはずがない。反対の声が出しにくくなることは間違いない。
杞憂であってほしいが、小泉総裁は17年度末までに自民党としての憲法改正案をまとめると公言している。「(民主党と)協力して憲法改正を現実のものに」と言う首相だが、9条改正が焦点に違いない。タイミングが良すぎるではないか。
もちろん筆者も派遣された隊員の無事帰還を願う者だ。しかし、旭川市でその意思表示として黄色いハンカチを掲げる運動が進められていることは気にかかる。山田洋次監督の名作「幸福の黄色いハンカチ」にあやかったものだという。当の山田監督は新聞紙面で迷惑がっていたが、やはり派遣をやめさせる声を上げることが先のはずだ。
「派遣賛成とか反対とか諸々の一切の思想的、政治的背景を持つものではなく」と企画者が言っても、これを行政が後押ししたり、市民運動だといいつつ町内会などで黄色いハンカチを掲げることを決めるなどしたらどうだろう。掲げない者は非国民とは言わないまでも、派遣反対派かまたは冷たい人だと後ろ指を指されかねない。不本意でも掲げないといけなくなる。
これは、いつか来た道ではないのか。運動を提起した人が悪いのではない。こういう状況を作っている政府の責任なのだ。黄色のハンカチを嫌いになりたくはない。今、私は黙っているわけにはいかないのだ。
(2004.2.21)
