真の牛丼ファン証明書をもらって、牛肉の安全性を考えた
2月11日一日だけ吉野屋の牛丼が復活した。「よしぎゅー」と呼ばれるこのチェーン店は、アメリカ産牛肉の輸入禁止以来、牛丼を出せなくなっている。一日限りで復活した牛丼は、車が突っ込むほどの人気で、来店した客が店の外にまで並んでいる様子が報道されていた。かくいう筆者も吉野屋に足を運んで牛丼を食べた。
牛丼並盛300円の代金を支払うと、「牛丼への愛を、ありがとう」と書かれた吉野屋カラーのカードを渡された。開いてみると、「あなた様は、吉野屋『2.11牛丼〈限定〉復活)』にて牛丼を召し上がられた真の牛丼ファンであることを証明いたします。」と書かれてある。なんと牛丼の写真がポップアップする牛丼ファン証明書なのだった。
うーん、そうなのか。僕は牛丼ファンだったのか。一日限りの牛丼を食べに来るくらいだから、やはり牛丼ファンなのかもしれない、と納得しかけたが、待てよと思う。
この日、全国の吉野屋で提供された牛丼はおよそ150万食。その全員にこのカードを配ったのかどうかは知らないが、相当な数を印刷したに違いない。とすれば、経費も馬鹿にならない。伊達や酔狂で配っているわけがない。マスコミも言うとおり、アメリカ産牛肉の輸入再開の世論を高める意図は明白だ。つまりこのカードは、牛丼ファンならぬ吉野屋応援団づくりを狙ったもの。確かにカードには「『米国産牛肉全面的早期輸入再開を求める会』の100万人署名に活動に、ご協力ください」とも書かれていた。
政府は生後20ヶ月以内の若い牛を全頭検査から除外するという見直しを決めようとしている。アメリカ産牛肉の輸入は再開され、牛丼が毎日食べられるようになり、めでたしめでたし?
はたしてそうか。アメリカの牛は多すぎて、1頭1頭の年齢は特定できない。肉になった状態で若い牛は軟骨部分が少しピンク色がかっているので判別するのだという。判定方法は、およそ科学的とはいえないものだ。それでいいと日本政府は言おうとしている。20ヶ月以下の牛では発症例がなく、検査してもわからないから検査の意味がないという理由だ。けっして感染していないからではない。
変異型ヤコブ病での初めての死者が日本で出た。イギリス滞在1か月の男性だったが、現地で牛肉を食べたせいなのかは定かでない。これから入ろうとしている米国産牛肉も安全と言い切れるものではないのだ。だけど安いから、美味しいからと多くの人が牛丼に群がる。狂牛病の肉骨紛のエサに群がる牛。その肉に群がる貧乏人の図式だけは、牛丼ファンとしては勘弁してもらいたいものだ。
(2005.2.12)
