義理を愛に変えるとき

 バレンタインデーを迎えた。かつての熱狂はなくなったように感じるが、それでもテレビではチョコレートの有名ブランドを買う女性たちの姿が報道されている。

 女性たちが愛する人にチョコレートを贈ることに目くじらを立てるつもりはない。少子化の今のこと、これを機に結婚する人が増えるなら社会全体としては好ましいことというべきかも知れない。もちろん、そういうチョコをもらえば嬉しいというのが正直なところだ。

 あえて言いたいのはいわゆる義理チョコのことだ。以前より減ったとは言え、女性たちが義理のために費やす経費はどれほどになるのだろう。

 新聞の漫画に、一ヶ月で三倍になる投資話に乗らないかと誘う女性、そしてバレンタインね、と応える女性を描いたものがあった。本当にそんな風に思っている女性がいるのかどうか知らないが、そんな風に思っている女性が筆者の周りにいないことは幸いだ。

 一ヵ月後はホワイトデー。お返しは様ざまでこれが定番というものはないのかもしれないが、その時期にはデパートの売り場などにそれとわかるコーナーがしつらえられて、それなりににぎわっている。女性が費やす経費の3倍のお金がそこで消費されているとは思わないが、それでも少なくない金額が使われていることは間違いない。

 チョコ業界には悪いが、この際義理チョコはやめて、それにつぎ込むお金を震災や大津波の被害に遭った方たちのために使ってはどうかと言いたい。同時にホワイトデーのお返しも今年はやめて、そのお金を「愛」のために使ってはどうかと提案したい。

 もし日本中の人が「義理」チョコをやめ、お返しも「愛」に変えれば、その「愛」の額はどれほどのものになるだろうか。想像をはるかに超える額が集まるのではないだろうか。

 投機資金が世界中を駆け巡り、実体経済を破壊するなど、グローバリゼーションの悪影響は深刻だ。義理が愛に変わるとき、マネーのグローバル化に負けない、「愛」のグローバリゼーションの展望も開けるのではと期待したくなるのだ。

 というわけで、義理チョコをいただいた(本当は0個かもしれないが)方には義理を欠いて申し訳ないが、この際は「お返しは、被災者へのカンパに使わせていただきますので、ご了承くださるようお願いいたします」というカードを準備しておこうかと思っている次第。 

                                        (05.2.15)