「ムネオハウス」と「ふなしん」をつなぐもの
「鈴木さん、あなたは私たちの友だちです」この看板がかけられた通称「ムネオ・ハウス」の写真には、開いた口がふさがらなかった。もとはといえば、NGOのアフガン復興会議への出席問題だ。田中前外相と外務省、そして影の外相と言われた鈴木氏のバトルが注目されていた。
外務省の機密費の官邸への還流に気づいた鈴木氏。それをネタに力をつけたに違いない。ことの本質は外務省と官邸をつなぐ裏金問題のはずだった。喧嘩両成敗の形をとって首相が幕引きを図ったのもうなずけた。まさか、「ムネオ・ハウス」なんてものが飛び出てくるとは思ってもいなかったに違いない。
鈴木宗男氏が外務省に圧力をかけて、自分の後援会の幹部が経営する会社しか受注できないような条件をつけさせた。しかも、受注した会社は、実際には建設の能力がなく、大手のコンサルタント会社に丸投げした。その儲けの一部が鈴木氏に政治献金として還流したという。みごとなものだ。自民党政治の図式を、この上なくわかりやすく、私たちに示してくれたと言うほかない。
鈴木氏がかかわった北方支援受注業者からの献金という形の鈴木氏への還流は、4,500万円に上るという。以前からうわさのあったODAの利権とはこういうことだったのだ。だから、ことは鈴木氏による外交私物化問題だけではない。政官の癒着とこの自民党の利権政治こそ正されなければならない。この問題をきちんと解明して、是正に踏み出すかどうかは、小泉首相の言う構造改革とは違うかもしれないが、政治改革としては本命というべきだ。
一方、新聞で読んだことだが、「ふなしん」こと船橋信用金庫が破綻に追い込まれた。昨年末に金融庁が検査に乗り込んだ。赤字経営ながらもなんとか返済を続けていた中小企業の債権も「要注意先」とされた。不動産鑑定も難癖つけられ、評価は下げられた。不良債権とみなされる額は膨れ上がり、必要な引当・償却金の額も増えた。新たに必要になった額は22億円。14億円の債務超過となった。検査終了後1週間での破綻だった。
ところが、これには続きがあった。千葉県内への進出を狙っていた東京東信金が、「ふなしん」破綻発表の日に受け皿機関として名乗りをあげたのだ。しかも金融庁が同日発表した破綻処理にあたる管財人団に、東京東信金の職員がすでに入っていたという。営業を引き継いだ信金には、より多くの公的資金が投入される仕組みなのだ。いかにもできすぎだ。仕組まれたとしか言いようがないではないか。
普段見えないものが見えてくる。どうやら今がその時のようだ。「ムネオ・ハウス」と「ふなしん」。何の関係もないはずなのだが、政治と官僚がセットになって利権が絡む絵柄は、まるで屏風絵のようにつながって見えてくる。
小泉首相が進めようとしている不良債権処理を中心とした構造改革。泣くのは整理改修機構に債権を送られ、無理やり廃業に追い込まれる中小企業。しかも、それは不況が理由の不良債権なのだ。
そして、その一方で利権を手にしてほくそえんでいる者が確かにいる。今、改革すべきは、この構造なのではないかと思えるのだが、いかがだろうか。
(2002.2.25)![]()
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