「茶色の朝」を迎えたくはない
注文していた「茶色の朝」が届いた。フランク・パヴロフの絵本だ。30ページのこの絵本。フランスで発刊された原書はたった11ページ、1ユーロの本。
この小さな本「茶色の朝」が、2002年のフランス大統領選挙でシラク大統領と決戦投票にまで進出した極右政党・国民戦線のルペン候補の野望を打ち砕いたと言われている。
ご存じの方もあるだろう。「俺」と友人のシャルリーは、それぞれ白に黒のぶちの猫、黒のラブラドールを飼っていた。ところが政府が決めた「ペット特別措置法」で茶色以外のペットを飼うことが禁じられたため、しかたなくペットを処分して、茶色の猫、茶色の犬を飼い始める。流れに逆らわないでいれば面倒に巻き込まれることもない、茶色に守られた安心も悪くないと思っていたが、ある日シャルリーは自警団にアパートのドアをこっぱみじんにされて連れて行かれてしまう。
「時期はいつであれ、法律に合わない犬あるいは猫を飼った事実がある場合は、違法となります」というニュース。シャルリーは「国家反逆罪」で逮捕されたのだ。そして、一晩中眠れない夜を過ごした「俺」の部屋のドアを朝早くたたく音がする。外は茶色。・・・というお話だ。
あのナチスが初期に茶色のシャツを制服にしていたので、フランスで茶色はナチスを連想させる色なのだという。
東京都では、学校の卒業式などで教師がちゃんと君が代を歌っているか教育委員会の職員が厳しくチェックし、歌わなかった者を処分している。自衛隊の官舎に自衛隊のイラク派兵反対のビラを配布した人が逮捕された。普通の広告ビラを入れても何も言われないのにだ。
公衆トイレに戦争反対と落書きした人も逮捕されている。あの戦争中でも落書きで逮捕まではされていないのにだ。
広島でも学校で東京都同じようにチェックするよう指示が出されたと報道されていた。岡山はどうか。“まあ、不本意だが君が代を歌うくらい”と思っていないか。そこに、「茶色の朝」が近づいていると思えないだろうか。
憲法を変えるという。9条を変えて戦争をできる国にする。教育基本法も変えて愛国心を教え込むことを狙う。教科書検定でおかしな教科書を合格させる。
中にいる私たちには、茶色に染まりつつあるのが見えにくい。中国や韓国からはそれが良く見えるのかもしれない。暴力はいけないが、あのデモを「茶色の朝」への警告と見るべきではないか。
実は私は茶色という色は嫌いではないから、茶色のジャケットはよく着るのだが、決して「茶色の朝」を迎えたくはないと思うのだ。 (2005.4.17)