中古HP8569Bの修理
-夢のスペアナ二台環境を求めて-

0.最初にスペアナありき
 初めてSHF技術アドバイス講習会に参加した時、びっくりした事の一つに「夢の測定器」と思っていたスペアナがそこで動いていた事だった。確か、中学・高校の頃には「家一軒くらいの価格がするらしい」と聞いていた。でも、一目でスプリアスもわかり、dB単位でダイオード検出器では全くわからない信号も検出できる。こりゃあ、すごいや・・・ 欲しいけど、無理だよな、と思いかけて、マテヨ となった。以前、NDC(名古屋デジタル懇話会)の研究会に参加したメンバーが「パソコンにつないで使うスペアナキットがある」という話をしていたのを以前、確か見た覚えがあったのだ。MLの過去ログを探して、URLを探し、たどりついたのが、スペアナキット GigaSt V1だった。まだ、GigaStを知る人はほとんどいない2000年の2月頃の事だ。かくて、3月にはトラブルをこえて、スペアナキットが完成し、1.2Ghzトランスバーターの製作にはずみがかかった。なんと言っても、「目で見ることができる」というのは、すばらしい。かくて、スペアナは我が家でのマイクロ波工作に欠かせない存在となった。

1.私のスペアナ遍歴
@GigaSt V1  今ではすっかり有名となったGigaStだが、2000年当時は「知る人ぞ知る」もので、最初はプリント基板はなく、穴あき基板で作るものだった。私が頼んだ時に、「ちょうど基板を作りました」とのことで、基板化されたものを製作した。バンドは1と2だけで、パラレルポートに接続し、PICのプログラムを書き換えて、TGとスペアナなどの種類を切り替えていた。でも、ともかく高周波が見えるということにびっくりした。バンドは2Gまでだったが、2400Mを見るためには、ドレーク・コンバーターとATTを使った。10Gを製作した時は、ドレークコンバーターのLOを取り出して、ダイオードSPD221と組み合わせた外部インチキ・ミクサーでヘトロダインして、信号を確認・調整した。絶対値はともかく、目的信号の強さを確認できるのは大きな意味を持っていた。
 今では、Ver4となって、5Gも見えるようだが、注文が多くて、品切れになりがちとなり、順番待ちになるようだ。我が家ではVer3も組み立てた。SGとTGとしてはまだまだ使えるし、携帯してのデモにも良いようだ。特にDOSで動くので古いパソコンを活用するのにはもってこいだ。

ASYSTROM-DONNER

 2001年、10Gを製作している頃、Yahooオークションで65K円ほどで入手した。ガチャガチャと回転式ドラムでバンドを切り替える時代物だが、アナログのスペアナで12Gまでは見えるものだった。外部ミクサーもつけられて、40G台まではバンドの表示があった。これで一気に製作にはずみがついた。ただ難点もあり、YIGでのプリセレクターがないので、どのバンドでもハーモニクスと本体の区別が難しかった。慣れると、雰囲気である程度わかるのだが、どれが目的信号で、どれがお化けかを見ないとわからないのだ。でも、24Gの製作途中までは、これでほとんどの調整をやった。価格相応以上の役割を果たしたと思う。次の貰い手にQSYしていったが、そろそろ寿命になっているかも知れない。

BHP8569B 初代

 2002年冬 24Gの製作にせいを出していて、「スプリアスと本体が区別できるスペアナが欲しい」という願望にとりつかれた。一時金を他には使わずに、オークションでじっと見ること数週間。なんとか手に入れられたのがHP8569Bだった。この機械は、大変にすばらしい の一言につきた。
 まず、画面が大きく、ダイナミックレンジが広い。70dB以上の表示がされるのだ。勢い、今までは全く見えなかったスプリアスがうじゃうじゃと見えて、「見えすぎるって怖いな」ともなった。次に、中古というのだが、ほとんど使っていなかったのか新品同様だった。さらに、20Gまでは見えて、外部ミクサーを作ると110Gまで見える。それもHP特有の「本物・偽者識別装置」がついているのた。これは、ボタンを押すと、2Mhzだけずれるのが本物、もっと大きくずれるのは偽者という仕掛けだ。HPは前からつけていたらしい。うしし、これはすばらしい・・・とご満悦であった。ただ、たった一つだけ問題点があり、24Gを見るのにダイレクトでは見えず、外部ミクサーが必要だというのが唯一の不満だった。
 で、ずっと使うつもりでいたのだが、ひょんなことで次のMS710Cを入手してしまい、手放してしまった。槇岡さんには「二台ともおいておきなさい」と言われていたのだが、金欠には勝てず・、二台はいくらなんでもとその時は思った。でも、今になって考えると、やっぱり手放すんじゃなかったと後悔している。hi

CMS710C

 2003年秋、オークションをぶらりと見ていたら、見つけた。なんと価格は198K円。このタイプは、JE1AAH高見沢さんのお宅で拝見したことがあったが、なんと言っても、「デジタル」で周波数をポンポンとキーで入力すると、その周波数が見えるのがすばらしく楽チンで、かつ24Gが直接見えるのがポイントだ。外部ミクサーをつけると、140Gまで見えるというのもすごい。これも、目的周波数を入れて、そこで見える信号を最大に調整すればよいのだから、私のような「スペアナが調整用インジケーターとして必要」という目的には最高なのだ。外部ミクサーをつけて、75Gも発見できたのは、やっぱりデジタルでポンポンと計算して使えるからだろう。
 が、このMS710Cにはどうも構造的な弱点があるようだ。第一は、入力部の10dB ATT切り替え部分がどうも弱いみたいなのだ。それも、冬場になると調子が悪くなる。夏場は問題なく使えるのだが・・・。この症状は、うちだけでなく、他にも数人から聞いているので、間違いないようだ。第二は、HP8569Bと比較すると、ノイズレベルが高いようだ。このため、8569Bほど、スプリアスが気にならない。(!?)精神的にはよいのだが、本当の目的からすると性能的にはPLLの初期なのもあって、8569Bの分解能の方が上らしい。
 それでも、ワンタッチに周波数が特定できて、こんなに便利な道具はない。これに、もう一台、8569Bがあったら、鬼に金棒・・・と、あきらめつつも思ってはいたのだ。

再び、HP8569Bが我が家に来た
5月某日 オークションでHP8569Bが100K円で出ている。なんでも、RBWの可変がうまくないそうだが、一応、動く模様。うーん、この価格ならば、710Cの調子が悪くなっても使えるし、2G以下のバンドを見ながらRFも見るのに良いのではないか・・・。でも、これは高くなるかなぁ???
5月某日 101K円で落札できた。バンザイ。あとは来るのを待つばかり。
5月某日 帰ると「なんだかでかい荷物が来たぞ。」と子どもに文句を言われた。ま、重たいし、文句を言われるのもしょうがないね。で、点検すると、確かにRBWは切り替えできない。また、画面はけっこうくたびれている。でも、フルバンドのスイッチを入れると、ちゃんとRBWが3Mに切り替わる。・・・という事は、電気的な回路は動くのだが、制御するスイッチ部分がおかしい、と考えるのが妥当のように思う。
 でも、まずはマニュアルを見つけなくては・・・。

7月某日 CD-RでマニュアルのPDF化したものをいただくことができた。でも、CD-Rでは読みにくいので、一念発起して、レザープリンターで印刷した。こんな時には、レザープリンターは便利である。前に「コピーで基板計画」の時に、トナー転写ができないのに買ってしまったブラザーのレザープリンターが大活躍だ。これだけ借りてコンビニでコピーしたら、多分、レザープリンターが買えてしまうだろう。hi
 さて、これでパネルをはずして・・・と思ったが、よく外し方がわからない。この日は、これでドロンとなった。

8月某日 久しぶりに、再び、パネル外しにチャレンジする。上の部分にネジ部分を覆っているプラスチックのカバーがあることに気がつき、これを外したら、制御部のパネルだけが外れてくれた。さて、これでスイッチ部を掃除すればよいのだろう・・・。
 でも、インチサイズだからだろうか、スイッチ部の六角トルクドライバーであうものがない。うーん、どうしたらようかな。とりあえず、ネジだけ外してながめてから、ネジをしめなおした。これだけでも、しばらくはRBWの可変ができるようになった。ただ、数回、カチャカチャやっていたら、またまた切り替えができなくなってしまった。
 こりゃあ、やっぱりこのスイッチ部の問題だな。

8月某日 さて、夏休みもあと数日となって、HP8569Bの手入れをすることにした。接点復活剤を使うか、それとも洗浄剤を使うか、とJA9TTT/1加藤さんの掲示板で相談してみた。すると、わかった事は、@接点復活剤は薄い膜ができてしまって、だめになる場合も多いので、注意が必要だ。A接点の洗浄ができるし、またすり減っている場合には、ナノカーボンで補強する手もある という事だった。
 町田に出て、サトーさんで眺めてみたら、「接点洗浄ペン」というのが安い。ペンタイプになっていて、こすれば綺麗になるというものらしい。これぞ、私の考えていた用途には最高だ・・・と買って帰った。

8月某日 いよいよ、六角ドライバーでスイッチ部を分解して清掃することにした。が、よく見ると、なんだか変なことに気がついた。
 このHPのスペアナは、着替え部のスイッチをパターンで作ってある。そしてプラスチックの回転部について金属のベロが回って、スイッチが切り替わることになっているのだ。ところが、よく見ると、RBW切り替え部には、なんと金属ベロがついていない!! 探したら、ベロ部が出てきた。さらに、カチャカチャやっていたら、ATT部のベロもポロリと外れてしまった。
 よく見ると、金属ベロには、小さな穴があり、これにプラスチックの回転部についていた突起をさして、先を溶かして、接着剤で補強した形で固定されていたようだ。ところが、この突起がポロリとれて、接着剤だけではもたなくなったので、落ちてしまったのだと思われる。
 うーん、天下のHPともあろうものが、こんな簡単なイージーな止め方をするのかねぇ??
  そこで、この回転部を取り出して、突起のあった場所に1mm程度のドリルで穴をあけてみた。これだと小さいので、1.5mmにして、金属ベロの取り付け部にも同じくらいの穴をあけ、1.7mmのネジでとめこんでみた。もちろん、その上には接着剤で補強をするのだ。これでなんとか復活ができそうだ。
 ただ、ATT部のスイッチを分解しようとしたら、六角が硬くて、はずせなかった。もう少し、強く回せる長い工具が必要なようだ。

9月1日 今日は、六角レンチの長いものを、UNIDYで探してきた。六角レンチには、各種あるのだが、HP8569Bを分解するのに必要なものは、1/16インチと1/20インチ(1.27mm)のようだ。このうち、特に1.27mmは細いので、コケやすく、長くてしっかりしたものが必要だ。これでATT切り替えスイッチ部を分解してみると、やっぱり金属ベロが落ちている。そこで、同じく修理をしてみた。
 さて、これで完了・・・。と元に戻すのだが、これがまた大変だ。「押すとATTの切り替え、通常の状態ではレファレンスの切り替え」となっているので、微妙な金具の位置が問題となる。悪戦苦闘して、なんとか組み立てた。
 次は本体とコネクタをつなぐのだが、ちゃんと写真を撮って置くべきだったと反省。hi まあ、なんとか動いた。さて、これで動かすと・・・あれれ、RBWとかはよいのだが、「押して切り替える」というATT部がうまく切り替わらないぞ。うーん、またまた分解か・・。

9月4日 そこで、再び分解を・・・と思ったら、今度はパネルを外さないとスイッチが部がいじれないことに気がついた。難しいな。が、VRについているツマミのネジがどの六角でもあわない。うーん、どうしてだろうか。「これはトルクスT-3で開いたという話もあったので、楽天の工具ショップでトルクスの三番を注文した。

9月6日 深夜に帰宅したが、トルクスがきていたので、使ってみた。ネジの穴にいれると・・・?????荒れれ、入らないよ。なんでだろ。そこで、穴を明かりにともしてみて、ビックリ。なんと+が見える。何のことはない、単なるプラスネジの細い奴だったのだ。トホホホホ。
 そこでやめればよいものを、がんばって、深夜まで、スイッチの分解・接点修理などをやりだしてしまった。はじめたら、途中では終わらないのがこうした作業だ。さらに、今度の場合は、一つ金属ベロがなくなっている。察するに、この前、修理に使ったのが、ここのベロ接点だったに違いない。でも、ないと困るので、一つ取れてひっかっていた接点ベロをリン青銅にあてて、はさみで切り出して、代用品を作ってみた。これにドリルで穴をあけてやり、なんとか修復を終えた。
 だが、組み立てがさらにやっかいだ。二度、三度、と間違ってはバラしなおすはめになり、気がついたらシンデレラタイムを大幅に超過していたので、寝ることにした。

9月7日 今日も帰宅が遅いと思っていたら、意外なことに、台風のために生徒諸君が早く帰ってしまい、定時+アルファで帰ることができた。
 さて、晩飯後、パネルから外して再び組み立てをはじめた。苦心惨憺して、今日はやっと組み立て方がわかったのだ。なんとか組みあがり、本体と接続して、電源を入れる。
 カウンターは正常、ATTも、リファレンスも正常、RBWもOKよーし これで完全!!と思ったら、SPAN(WIDTH)が狭くすると、どうもスイッチ接点がつながらないのか、200Mとかになってしまう。しまった、やっぱりこちらのスイッチもバラせばよかったのだ・・・。後悔先に立たず という奴である。hi

9月9日 やっぱり調子が悪いSPANのスイッチを直すために、またまた分解して、接点をつけなおした。これですべての接点をつけなおすことになる。最初から全部やればよかった・・・。hi
 ところが、組み立てて、動かしたら、なんかヘンダナ・・・ なんと、回転のストッパーを逆向きにつけてしまい、SPAN 5Mの次が飛び飛びで200Mになってしまった。

あらら・・・、また分解、組み立てかぁ という訳。お粗末。

やっぱり写真をとって、でかくのばしてから、分解するべきでした。なれた
から大丈夫と高をくくっていたのがいけません。hi

9月10日 スペアナ HP8569Bのスイッチ部の修理が、ようやく完了した。

スイッチのストッパー金具を逆につけてしまったので、またまたバラして組み立て直した。ただ、SPANとRBWの切り替えが機械的に連動・独立と切り替えができるのだが、これはどうも、バラし方が悪かったのか、しかけがイマ一つわからず、復活できていない。まあ、SPAN/RBW ATT など、全部切り替えそのものは正常なので、ちょっと気をつければ問題はない。

次なる問題は、この二台になったスペアナをどうやってラックに乗せて、他のものとあわせて、使えるようにするか。

MS710Cは、24.5Gまで見える
のがポイント。HP8569Bはダイナミックレンジが広く、特に下のバンドではノイズが少なくて感度が-105dBmとかと書いてある。またCRTが大きいのが利点。
ラックになんとか載りました・・。hi
その他、もろもろを入れ直すのと、測定機用のパソコンを今までのフルタワーの巨大なものから、XPの入っている小さな奴に取り替えてGPIBもPCIで乗せて・・・と考えている。測定用パソコンをXPパソコンにすればNF計もパソコンで計測するJA5FNX田村OM 開発のものにできる。これで、現役をしりぞいているIC1271かIC271とTRVをつけたもので、測定とか調整ができるようにラックに入れたいなぁ・・・。

さて、この夢物語、いつになったら完成しますやら。