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 第4話/Sweet Valentine's Day (5)

 

 
 夜の公園のブランコに腰掛けている夏帆を見つけた。

「早かったわね」
「まぁな。それで、話ってなんだよ」
「あのさ…けっきょくもらえた?」
「な、なにをだよ」
「とぼけないの。チョコよ、チョコ」
「…ああ、あの後、両手でも抱えきれないくらいもらったさ」

 と、嘘ぶく。

「へぇ〜。そんなにたくさんもらえたなら、これ以上増えるのは迷惑よねえ」
「え? いや、待て、嘘だ、嘘。まだひとつも貰ってない」
「ふ〜ん、やっぱ、ひとつも貰えなかったんだ」
「う、うるせーよ」

 俺は夏帆の言葉に、ちょっとムッとして答える。
 なんだよ、夏帆のヤツ。俺をからかうためにわざわざ呼び出したのか?

「欲しい?」
「そりゃぁ、まあ…」

 夏帆は膝にかかえていたバックから、チョコを取り出した。

「それじゃあ、はい」

 それを俺に渡す夏帆。

「おお! ありがたいっ、これで救われる!」
「なによ、大げさね」
「ところで誰からだ?」
「??? …なにがよ?」
「だから、このチョコ」
「はあ? なに言ってるの? 誰からって、そんなの、あたしがあげたんだから、あたしからに決まってるじゃない」
「え? お前から? …でも、お前、昼間、あげないって…」
「なに? 不服なの? じゃあ、返して」

 夏帆は怒って俺の方に手の平を差し出す。

「いや、全然不服ではありません。ありがたく頂戴いたします、夏帆様」

 と言ってひれ伏す俺。

「あのねぇ。まぁ…いいけど」
「冗談はともかく、持つべき者はいい幼なじみだな。気をつかってもらえて、俺は嬉しいよ」
「べ、別に気を使ったわけじゃないわよ。 …用事はそれだけ。それじゃ」

 恥ずかしそうにそう言うと立ち上がって、帰ろうとする夏帆。

「ああ。気をつけて帰れよ」

 その背中を見送りながら、俺も家に戻ろうとする。

「ま、待って」
「ん?」

 不意に声をかけられ、俺は振り向く。