夜の公園のブランコに腰掛けている夏帆を見つけた。
「早かったわね」
「まぁな。それで、話ってなんだよ」
「あのさ…けっきょくもらえた?」
「な、なにをだよ」
「とぼけないの。チョコよ、チョコ」
「…ああ、あの後、両手でも抱えきれないくらいもらったさ」
と、嘘ぶく。
「へぇ〜。そんなにたくさんもらえたなら、これ以上増えるのは迷惑よねえ」
「え? いや、待て、嘘だ、嘘。まだひとつも貰ってない」
「ふ〜ん、やっぱ、ひとつも貰えなかったんだ」
「う、うるせーよ」
俺は夏帆の言葉に、ちょっとムッとして答える。
なんだよ、夏帆のヤツ。俺をからかうためにわざわざ呼び出したのか?
「欲しい?」
「そりゃぁ、まあ…」
夏帆は膝にかかえていたバックから、チョコを取り出した。
「それじゃあ、はい」
それを俺に渡す夏帆。
「おお! ありがたいっ、これで救われる!」
「なによ、大げさね」
「ところで誰からだ?」
「??? …なにがよ?」
「だから、このチョコ」
「はあ? なに言ってるの? 誰からって、そんなの、あたしがあげたんだから、あたしからに決まってるじゃない」
「え? お前から? …でも、お前、昼間、あげないって…」
「なに? 不服なの? じゃあ、返して」
夏帆は怒って俺の方に手の平を差し出す。
「いや、全然不服ではありません。ありがたく頂戴いたします、夏帆様」
と言ってひれ伏す俺。
「あのねぇ。まぁ…いいけど」
「冗談はともかく、持つべき者はいい幼なじみだな。気をつかってもらえて、俺は嬉しいよ」
「べ、別に気を使ったわけじゃないわよ。 …用事はそれだけ。それじゃ」
恥ずかしそうにそう言うと立ち上がって、帰ろうとする夏帆。
「ああ。気をつけて帰れよ」
その背中を見送りながら、俺も家に戻ろうとする。
「ま、待って」
「ん?」
不意に声をかけられ、俺は振り向く。