「ちょっと、そこのハンサムなお兄さん。マッチいらない? え? ライターがあるからいいって? だめよ、オイル臭いライターの火なんて煙草の味が悪くなるだけよ。やっぱり通はマッチじゃなきゃね。どう?安くしておくわよ。え? 買ってくれる? ありがとう〜。お兄さん大好きよ」
「……」
ウインクに投げキッスのおまけまで付けた女の人の姿を見て少女は驚きました。
「……っていう感じにやるの。分かった」
「で、出来ません。そんな恥ずかしいこと…」
「恥ずかしい? そんなんじゃいつまで立っても立派なマッチ売りにはなれないわよ」
「別になりたいわけじゃ…」
「黙りなさい。いじけて他人が同情してくれるのを待つなんて甘ったれた根性で人生を渡っていけると思ってるの? 多かれ少なかれ、みんないろいろ苦労をして幸せをつかんでるの。努力もせずに幸せになろうなんておお甘よっ」
「……」
「生きるためなら何だって利用しなさい。私の見る所、あんた顔は悪くないからその辺り上手く利用すればいい成績を出せるはずだわ」
「り、利用するって言われたって」
「お黙り!! とにかく、その服装からなんとかしなきゃ駄目」
「え?」
女の人は少女を路地裏へ引っ張って行って、無理矢理、服を着替えさせました。