■優紀編■
5日目【7月25日】


 
 
 一瞬、小野寺さんの顔を思い浮かべてしまった。
 でも、彼女に対しての想いは憧れ的なもので、恋愛対象として好きかという事には疑問が残る。

「あ、今、誰かの事、思い浮かべたでしょ?」

 なんで分かるんだ? 女の感って奴?

「やっぱり美鈴お嬢様?」
「美鈴? まさか。昨日も言ったじゃないですか。確かに気になる奴だったけど、そういった感情はないですよ」
「へぇ…。でも、やっぱり意外。こっちに来てからもけっこう二人でいたみたいだし、そうじゃないかな〜って思っていたのに」
「誰があんなわがまま女」

「でもね、昔は素直でいい子だったのよ」
「あれ? 美鈴の事、昔から知っていたのですか?」

「言ったでしょ? 家の親と美鈴お嬢様の親とは友人だって。わたしが中学くらいの時は、よく美鈴お嬢様と遊んだりしてたわ。昔は「お姉ちゃん、お姉ちゃん」ってわたしについてまわって可愛かったものよ」
「だから美鈴の世話係りになった訳ですね」

「そうなの。でも、久しぶりに会って驚いたわ。昔なじみだから気が楽だと思ったんだけど大間違いだった。やっぱり環境がよくなかったのよ。お嬢様の面倒を見るのって嫌だった反面、少し可愛そうでもあったわ。だから辞めずに頑張って来たの」
「そうだったのですか…」

「お嬢様の方は、君の事をどう思っているのかしら」
「きっと、嫌な奴って思ってるでしょ」

 ぶっきらぼうに答えると、俺は窓の外を眺めた。