「すみません俺、ちょっと用事があるもんで」
「そう。残念ね。わかったわ。本当にありがとう。こんどお礼するわね。それじゃあ」
俺は適当な理由をつけて優紀さんの誘いを断る。彼女は少し残念そうな表情をすると車に乗り込み行ってしまった。
う〜ん、せっかく誘ってくれたんだし行ってもよかったかな?まぁいいか。
俺は元来た道を戻り姉貴の家へ帰った。
そして家が見える所に来て、誰かが玄関先にいるのが見える。
おや? あれは…。
「こんな所でなにしてんだ美鈴?」
つまらなそうに足元を見ている女の子は間違えるはずもない美鈴だった。
俺の事に気付くと一瞬嬉しそうに微笑んだように見えたのだが、次の瞬間には怒った顔をして俺の前にズカズカやって来た。
「バカ宇佐美、あんたを待っていたのよ。何処行っていたのよ! またっく」
「待っていたって、ずっとかよ?」
「そうよ。あたしを待たせるなんて、とんでもない男ね」
「なんだよ。俺、お前と何か約束してたか?」
そう、俺には美鈴となにか約束した覚えは全くない。
「う、うるさいわね。今日一日、私のお供をさせてあげようと思っただけよ。ありがたく思いなさい」
「そうか、お供ね…お供だと!」
でた。美鈴お嬢様のわがままが。
「なによ、文句でもあるっていうの!?」
「あるさ、あるある。おおありだ! 何が悲しくて俺がお前のお供をしなきゃいけないんだっ! 優紀さんならさっき別荘の方に帰ったみたいだぞ。お供なら彼女に頼め」
「いやよ。最近、深川とはできるだけ一緒にはいない事にしてるの。誰かに見張られているのはもうたくさん」
「…で、なんで俺なわけ?」
「感謝しなさいよ。私と二人っきりで一日過ごせるなんてめったにいないんだから」
俺はため息をついて美鈴の肩を叩く。
「美鈴よぉ、俺とデートしたいんなら、デートしたいって言えよ」
「な、なに言ってるのよ!私があなたみたいな最低男と一緒にデートなんてするわけないじゃない!」
まったくこの女は…