気持ちを伝える事は大切な事だと思う。
結果がどうなろうと、俺は彼女に気持ちを打ち明けるべきだ。ここで帰ってしまったら、俺は一生後悔する。
俺は拳を握りしめて気合いを入れると直美さんに向かって歩き出した。
「直美さん」
浜辺に座り込み頬杖をついて海を眺めているのは、紛れもなく彼女だった。
ゆっくりこちらを振り向く。
「あ…まこと君…」
意外と驚いていない。
もしかしたら、俺が来ることが分かっていたのかもしれない。
「私たち、もう会わない方がいいわ」
突然の言葉に俺は驚いた。やっぱり俺を避けていたんだ。
「恵理香ちゃんの事なら誤解なんだ! 俺は…」
「違うのまこと君。恵理香の事はわかってる…。まこと君と恵理香がなんでもない事はわかっていたわ…頭の中ではね。でも、私、嫉妬してた」
「え?」
「このまま一緒にいたら…私、まこと君の事、離したくなくなる…本気で好きになってしまうって」
「どうして…俺は…」
言わなきゃ、今言わなきゃと、焦る。
でも気持ちと裏腹に言葉がなかなか出てこない。
「俺は直美さんの事が好きだ! 本気で好きなんだ」
言ってしまった…。
沈黙が痛い。
直美さん早く何か言ってくれ!
直美さんが潤んだ目で俺を見上げた。憂いに満ちた表情とはこういう事をいうんだなと思った。
今までに見たことのない表情。
それは年齢以上に大人っぽく、色っぽく見えて俺は言葉を忘れてしまった。
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