◆7月26日<夕方>◆
『冷たい直美さん2』
じっとしてると落ち込んで考えてしまうので、気を紛らわす為、俺は駅前をぶらついた。
いつの間にか陽は傾き、夜がそこまで迫っていた。
どうしよう。
あと数時間しかない。とにかく夜にでも彼女の家に行って話をしよう。
姉貴の家へ帰ってきたぞ。おや、あそこにいるのは…。
「あっ、宇佐美さん!」
「あれ? 恵理香ちゃんどうしてここに? 直美さんにでも会いに?」
「宇佐美さん。どうしよう。直美先輩に誤解されちゃいました」
恵理香ちゃんは目に涙を溜めている。
「どうしたんだい? いったい」
「今日、あの後、バイトに行ったら、直美先輩の様子が変で、心配なので問いつめたら「まこと君と仲良くね」って…」
「…そうか。商店街で俺達のこと見かけたんだな」
「ごめんなさい。私が長々と引き留めたもんだから…」
「恵理香ちゃんが謝る事ないさ。つき合ってもらったのは俺だしね。なんとか誤解を解かなきゃ…それで、恵理香ちゃん。直美さんは?」
「直美先輩、家にはいませんでした」
「心当たりはない?」
「う〜ん…あ、そういえば先輩嫌なことがあると、星を見に行くって言ってたの覚えてます」
「そうか! じゃあ、あそこだな。ありがとう恵理香ちゃん」
礼を言うと俺はあの場所へ行こうとその場を去ろうとした。不意に恵理香ちゃんに呼び止められる。
「あ、宇佐美さん明日、帰っちゃうんですよね」
「ああ。恵理香ちゃんには世話になったね」
「せっかく知り合いになれたのに寂しいなぁ。また来年も遊びに来て下さいね」
「ああ、きっと」
恵理香ちゃんっていい娘だよなぁ。
俺、直美さんに会ってなかったら恵理香ちゃん狙っていたかも…って直美さんに会ってなかったら恵理香ちゃんとも会えなかったか。
とにかく今は直美さんだ。直美さんが夏、星を見るところはあそこしかない。
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