「じゃあ、そういう直美さんはどうなんだ? やっぱり好きな人とかいる?」
俺は直美さんに聞き返した。
「……」
「直美さん?」
「……」
「???」
反応がないのを怪訝に思った俺はボートに近づいて直美さんの顔を見る。
ありゃ? ボートの上で直美さん寝ちゃってるよ。
ボートに寝そべった状態で彼女は瞳を閉じたまま穏やかな寝顔で眠っていた。
波に揺れるボートがゆりかごみたいできもちいいんだろうな。
でも…。
「ホントに寝てる?」
「……」
やっぱり反応はない。
答えたくないので狸寝入りしている気はしないでもないけど…。
「まあ、いいや」
直美さんの顔をそっと覗く。
なんだ、本当に寝ちゃったのか…。
う〜ん、こう見ると寝顔もけっこう可愛いよなあ。
「直美さん…俺、直美さんと地元で出会えてればと思ってる……」
「……」
「直美さんは年下の男なんてあまり興味ないかもしれないけど……こんなに遠く離れていなかったら、俺、直美さんの事、彼女にしてたかもしれないな」
「……」
「…聞いてませんよね? どうせ」
話し相手がいなくなって、俺はボートに繋がってるローブを持ったまま、ただ波に身を委ねた。
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