■直美編■
3日目【7月23日】


 
 
 よし、恵理香ちゃんと一緒に仕事しよう。

 俺は恵理香ちゃんに連れられてセンターの入場券販売所にやってきた。
 
 天乃白浜は別にビジターセンターを利用しなくても海水浴を楽しめるが、ほとんどの海水浴客はここを利用する。半町営の施設なので設備の割には料金は大人600円と安い。その料金で駐車場からロッカー室、シャワー室、休憩室などのビジターセンター内施設が利用できる。そのほか海水浴用品の販売、レンタルもやっているし、売店はもちろん水着のまま入れるレストラン、喫茶店などがあり天乃白浜に来るならここを利用しない手はない。

 で、その入場券を販売しているいのがここだ。入場券とはいえ、これは便宜上使っている言葉で実際は入場料と交換にロッカーキーの付いたバンドを貸し出す所だ。これを腕に着けて持っている限り、ビジターセンターの出入りは自由って訳。

 「接客は私がやりますんで、いろいろ、サポートしてくださいね。もちろん他の人の手伝いもです」

 売場には恵理香ちゃんの他、二人が入場券を売っていた。

 「森沢さん、変わりましょう。昼休み行ってください」

 恵理香ちゃんは素早く恵美と呼ばれた娘と入れ替わった。

 「はい大人二枚ですね」
 「学生五枚ですね一応、学生書を拝見できますでしょうか?」

 うわぁ、さすがにテキパキしてるなぁ。

 「宇佐見さん百円玉が少ないの、事務所の沢田さんに言って五本ばかりもらってきてください」
 「OK」
 「団体さんです。ちょっと数を確認して下さい」
 「わかった」
 「あ、こっちのチケットが少なくなったわ、持ってきて」
 「りょうかい」
 「お客様をロッカー室に案内してくれないかな」
 「お易い御用」

 なんだ、楽勝楽勝!涼しいし…いい所選んだなぁ。

 「急にお客さんが増えて来ましたね。宇佐美さん、申し訳ないですけど、三番に入って下さい」
 「え?俺が?なに?入場券売るの?」
 「少しの間だけお願いします」

 げぇ〜こういうの初めてだから思いっきり不安だよ…大丈夫かなぁ。

 「ちょっと、早くしてよ」

 神経質そうなおばさんに急かされて、いきなり慌てた。

 「すいません、大人三枚200円のお返しですね」

 う〜ん確かこんなんだよなぁ。日頃から買い物するときによく観察しておけばよかった。

 「これ違うわよ。大人四枚に学生一枚に子供二枚に幼児四枚よ」
 「すみません」

 「宇佐見さん、両替お願いします〜」

 だぁ、俺だって忙しいんだ〜! やっぱり他の所にしておけばよかったぁ。
 結局、俺は最後までそのまま売り子をしてしまった。