■直美編■
2日目【7月22日】


 
 
 「ごめん! 思わず出来心で…」
 「まったく油断も隙もないんだから」

 直美さんは俺を睨んでそう言うと、お尻を少しずらして、こちらから距離を置く。

 あちゃ〜、いらんことしてしまった。
 こんな時、弘のヤツなら上手くやれるんだろうけどなぁ。
 俺は慣れないことはするもんじゃないなと後悔した。

 「本当にごめん」
 「……。誤解されたくないから言うけど、別に君のこと、嫌ったりしてるって訳じゃないから。でもね、私たち会ってまだ間もないじゃない? 私もまだ、まこと君の事、よく知らないし、まこと君も私の事を知らない。私はそんな状態で恋人みたいな事したくないのよ。ごめんね」

 彼女の声から棘が抜ける。俺はほっと胸をなで下ろした。

 「ああ。わかった。直美さんはいいかげんな事はしたくないだけなんだね」

 俺には直美さんのガードの堅い所に逆に好感が持てた。直美さんはいい加減な恋愛はしない人なんだ。