「ごめん! 思わず出来心で…」
「まったく油断も隙もないんだから」
直美さんは俺を睨んでそう言うと、お尻を少しずらして、こちらから距離を置く。
あちゃ〜、いらんことしてしまった。
こんな時、弘のヤツなら上手くやれるんだろうけどなぁ。
俺は慣れないことはするもんじゃないなと後悔した。
「本当にごめん」
「……。誤解されたくないから言うけど、別に君のこと、嫌ったりしてるって訳じゃないから。でもね、私たち会ってまだ間もないじゃない? 私もまだ、まこと君の事、よく知らないし、まこと君も私の事を知らない。私はそんな状態で恋人みたいな事したくないのよ。ごめんね」
彼女の声から棘が抜ける。俺はほっと胸をなで下ろした。
「ああ。わかった。直美さんはいいかげんな事はしたくないだけなんだね」
俺には直美さんのガードの堅い所に逆に好感が持てた。直美さんはいい加減な恋愛はしない人なんだ。
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